The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
父親の声が震えていた。
そして途中母親の泣き声が聞こえてきて、何とも言えない気分になる。
「帰ってくれ…。二度と私達の前に現れないでくれ」
父親はそれだけを言うと、泣いている母親の肩に腕を回してから歩いて行ってしまった。
龍宮寺先輩と佐野先輩は2人が歩いて行ってしまっても、ずっと頭を下げている。
頭を下げる事を最初は抵抗していた佐野先輩も、ずっと頭を下げたまま。
そんな姿を見ながら俺は視線をICUにいる少女へと向けた。
「これから愛美愛主とモメる。“不良(オレら)の世界”は不良(オレら)の中だけで片付ける。東卍(ウチ)のメンバーはみんな家族といるし、大事な人もいる。一般人に被害を出しちゃダメだ。周りの奴泣かしちゃダメだ」
まるで言い聞かせるような言葉。
だがその言葉はまるで真一郎君のようで、懐かしさを覚えてしまう。
「下げる頭持ってなくてもいい。人を想う“心”は持て」
「……ケンチンは優しいな…。ゴメン、ケンチン。ケンチンが隣にいてくれてよかった」
佐野先輩の言葉で分かった。
龍宮寺先輩という存在は、佐野先輩には大きな物であり隣にいなくちゃいけない存在ということを。
「オレ、少し分かった気がする。ドラケンが死んでなんでマイキーが変わっちまったか。なんで現在の“東卍”が極悪になっちまったか」
「うん…」
「ドラケンは“マイキーの心”だ。足りないモノを補ってる」
「俺もそう思った。だから龍宮寺先輩は死んではいけない存在なんだ……」
死なせては駄目だ。
死んではならない人であり、龍宮寺先輩を必ず守らなければならない。
「オレ、一旦未来に戻る」
「戻るのか?」
「14日後、愛美愛主の抗争までにオレ愛美愛主を調べてくる。だから和泉はドラケン君達を見張って欲しいんだ」
「……分かった。お前が戻ってくるまで、あの二人が喧嘩しないよう見張っとく」
そう言いながら外に出る。
すると2人の足が止まったので、武道と俺の足も止まり近くの柱に隠れながら見守っているとバイクの排気音が聞こえた。
(アレは…三ツ谷先輩)
バイクで2人の目の前にやった来たのは三ツ谷先輩。
そして佐野先輩は眠たげにしながらタンデムに乗り、龍宮寺先輩は2人を見送った。
もしかして、佐野先輩が眠たげにしていたから龍宮寺先輩が呼んだのかもしれない。