The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
突然の怒号に思わず肩が跳ねる。
そして壁に隠れながら覗いてみれば、中年ぐらいの男と後ろには同い年ぐらいの女性がいた。
だが中年男の顔は怒りに染まりきっている。
「娘をこんな目に遭わせて、のうのうと顔を出しやがって!!帰れ!!帰れ!!クズ共が!!」
「お父さん!!」
あの子の父親と母親だろう。
父親は怒りが溢れ出しているようで、龍宮寺先輩達に罵声を浴びせていた。
すると龍宮寺先輩は何も言わずに頭を下げた。
両手を後ろにしており、罵声を浴びせられたのに反論もせずに頭を下げている。
「頭なんて下げて済むか虫ケラ!!オマエらゴミのせいで娘は死ぬところだったんだ!!!」
「頭なんてさげんなよケンチン、オレら悪くねーし。ってか何人に八つ当たりしてんの、このオッサン」
「帰れ!!!虫ケラ!!!」
「ちょっと!」
「あ?誰に向かって口聞いてんの?」
すると次の瞬間、龍宮寺先輩が佐野先輩の頭を掴んだ。
そしてそのまま頭を力を込めて、頭を下げさせており佐野先輩は困惑した表情。
「申し訳ありませんでした」
「ちょっ、何すんだ」
「全部オレらの責任です」
「オイ!!」
「虫ケラが頭下げて娘が治るのか!?社会のゴミが!!!クズ!!クズ!!クズ!!」
「やめてください!!」
「は!?」
「黙れ、マイキー」
俺は壁に背を預けてから、足を投げ出して腕を組みながらただ罵声を聞いていた。
罵声を浴びせられている中、龍宮寺先輩は静かで反論しようとさる佐野先輩の口を止める。
「でも、マイキー君の言う通りだ。2人は悪くねぇし…あそこまで言う必要あるか?」
「言うだろ。自分の娘を殺しかけた『同じ不良』なんだぞ」
「でもっ…」
「あの父親が怒るのも当然だ。考えてみろよ…自分の娘が不良のせいでああなって、死にかけたんだ。そんな目に遭わせた奴らと同じ不良がいれば、怒りが湧いても当たり前。殴られないだけマシだろ」
「っ……そう、かもしれないけど」
不良は1括りされやすい。
あの父親の言う通り、社会のゴミやクズとも呼ばれて1括りにされるのだ。
だがそう思われるのは、それまでの不良達の行動のせいなのだろう。
ああやって罵声を浴びせられるのも仕方ない。
「娘は…ずっと昏睡状態だ…。なんでだ?あんなに可愛かった娘がそんな変わり果てた姿でっ…」