The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
涙を浮かべて鋭い目付きでキヨマサを睨めつける武道に、思わず彼を殴り続けていたキヨマサは汗を浮かべる。
昨日まで泣きながら自分の攻撃をただ受け止めていた人間とは思えず息を飲んだ。
「絶っっ対ぇ負けねぇ」
「……武道、お前っ」
笑みを浮かべる姿に和泉は何処か驚きながら、目を見開かせていた。
そしてキヨマサは荒い息を吐きながら武道を見る。
あれだけ殴られ蹴られてを続けたのに、今も倒れず自分を睨みつける武道。
そして武道の瞳から涙が零れてまた日向と和泉の姿を思い浮かべる。
(オレがヒナと和泉を救うんだ)
こんな自分を好きになってくれた日向。
未来で自分が最低な事をしたと知ってもなお、自分の為に協力してくれると言った和泉を救うと改めて強い決意をする。
「バット持ってこい!!上等だ、殺してやるよ」
「……バットって」
「早くバット持ってこい!!」
「タイマンじゃねーの?」
まさかのキヨマサの要望に辺りがザワつく。
だがそれを気にすること無く、キヨマサは『バットを持ってこい』と叫んだその時である。
「バット、バットうるせぇな。この糞野郎が」
「あ!?」
自分を貶す言葉にキヨマサが正面を振り向いた瞬間、キヨマサは誰かに蹴り飛ばされた。
地面に倒れたキヨマサの鼻からは血が伝う。
そして武道は目を見開き1粒涙を浮かべる。
自分の目の前には、少し小さな背中がありまるで武道を守るように立っていた。
「和泉……っ」
「武道みてぇに、身一つで戦えねぇのか?それか武道の諦めない根性に臆して焦ってんのか?」
「テメェ……っ!!」
「なぁ糞野郎。武道を殺すならまず俺を殺してからにしな?まぁ俺はお前に負ける気はしないし……武道は絶対守る。殺されそうになってもな」
「上等だぁ!!テメェもまとめて殺してやる!!」
煽るかのような和泉の言葉にキヨマサは激情する。
そして武道は大粒の涙を流して、和泉の自分より小さな背中を見つめた。
「早くバット持ってこいって言ってんだろ!!」
「オイ、キヨマサ」
「あ!?」
バットを持ってくるよう叫んだキヨマサに、誰かが声をかけた。
そしてまた邪魔が現れたのかとキヨマサは声がする方を睨みつけた瞬間、一気に顔を青ざめさせる。