The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第2章 東京卍會
そう一時期は花垣家に住んでいるようなモノだった。
家に帰らずに夜遊びばかりして、放浪していた俺を武道のお父さんことおじさんに見つかったのが始まり。
家に居たくなかったらココに居ればいいと。
(だからここで寝て、朝はここから学校に行ってた。でも夜は絶対に放浪してたし…だけどおじさん達はそれを咎めることは無かったんだよな……)
危ないから気を付けてね。
そう言われただけで、花垣家に戻ればテーブルにラップされた夕飯が置かれていた。
「おばさんとおじさんには…頭が上がらないよ俺は」
「そういえばお前一時期、猫みたいに放浪してたもんな」
「猫とか言うな」
「いや、猫。夜行性だったし、急に居なくなるし……オレその時お前が何時か本当に消えちまうと思ってた」
武道の声がワントーン下がっていた。
それに少しだけ驚きながら後ろを振り向けば、眉間に皺を寄せて拳を握り体を震わせている武道がいる。
「そんな事思ってたら、お前は本当に居なくなった…」
「武道……」
「わ、悪ぃ!変な事言って」
「居なくならない」
「和泉……」
「もう、居なくならないよ」
だけど『絶対』とは言えないんだ。
それだけは許してほしい…絶対になんて言葉はそう簡単に言えるものじゃない。
でも約束はする。
お前がこうしてタイムリープして来て助けてくれようとしているんだから…それを無駄にはさせたくない。
「さてと、風呂先に入るよ」
「あ、うん……」
「あんまり思い込むな。確かにあの時の俺は…そういう印象を与えてたけど、今は多分違うから」
「……多分か」
「そ、多分」
絶対と言えない所は許して欲しい。
そう思いながら俺は階段を降りていき、風呂場へと向かい素早く髪の毛を洗ってお湯に浸かり体も洗って出た。
長湯は好きじゃない。
逆上せやすのもあるので、長湯はしなくてあまりにも早く風呂を済ませるのでよく驚かれる。
「あ…おばさん椿油置いといてくれたんだ」
浴室から出ると、洗面台に俺が置きっぱなしにしていた椿油の容器が置かれていた。
暫く泊まっていなかったのに捨てずに残してくれていたようだ。
「やっぱ優しい所はおばさん似かな。武道は」
椿油を手のひらに出して、ゆっくりと広げてから髪の毛に塗っていく。
コレは唯一許された女らしい物だ。