The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第2章 東京卍會
「和泉」
「…はい?」
「さっきのは忘れて良いからな」
「……忘れる努力はします」
「してくれっ」
チラッと三ツ谷先輩を見れば顔が真っ赤。
右手で口元を抑えており、眉間に皺を寄せながら赤くなっている姿に目を見開かせる。
なんだろうか。
そんな顔されていれば、なんかこっちまで恥ずかしくなるというか……。
「和泉ー!!!」
「っ!?て、あ……けーすけ君」
「また会おうぜ!!!」
「うん!!」
「じゃあな!!」
変な空気を壊すかのように、けーすけ君が大声でそう叫んで呼んでくれた。
バイクに乗っており、手を振ってくるので振り返しながら引き攣った笑顔を浮かべておく。
「あー…んじゃ、オレも帰るか。その、明日も来るか?」
「じゃ、じゃあ行きます。その…借りたスウェットも返したいですし」
「分かった。じゃあ待ってるな」
ポンッと頭の上に手を置いた三ツ谷先輩は、クシャリと俺の頭を撫でてからそのまま歩き出した。
その後ろ姿を見ていれば、後ろから走ってくる足音が聞こえて振り向いて見ると武道の姿。
「お前…遅すぎるだろ」
「悪ぃ!ちょっと道に迷ってたんだけど……和泉ってあの三ツ谷くん?と仲良いんだな」
「仲良いと言って良いのか分かんねぇけど……昨日知り合ってその日に正体バレた」
「は!?」
「でも…悪い人じゃないのは分かる。それに、なんかあの人といると……」
「あの人といると?」
そこで俺は口ごもった。
あの人といると何があるのか、自分でもよく分からなくて…でも何処か安心するのは確かなのだ。
だけどそれはきっと…俺の男装を否定しなかったから。
自分を肯定してくれた気がして、何処か心が救われたような気がした。
「お、タケミっちとイズミっち」
「龍宮寺先輩…」
「ドラケン君!」
「今日は集会来てくれてありがとうな。また呼ぶ時はあると思うし、それで東卍に入るかどうか決めてくれや。んじゃ気を付けて帰れよ」
龍宮寺先輩は俺と武道の頭を少し乱雑に撫でると、そのまま歩き出した。
無理強いはせず俺達の判断に身を委ねてくれるようだ。
「帰るか?」
「そーだな」
「俺そのまま武道の家に泊まるから。その時に、未来で何があったか言えよ?抱えたまま苦しむとかは無しだ」
「……うん」