第9章 微熱を帯びたお酒
エルドは胸元に顔を沈めたまま。
・・・・・・・・動かない。
エルドの匂いを嗅いでいる鼻息とは違う、
寝息のような鼻息に変わったと気づくのは
時間がかかった。
「……エルドさん……?」
フィンはエルドの肩を揺する。
全く起きないエルド。
ふぅ。と胸をなでおろすフィン。
エルドの体をどかして、ソファーに寝かす。
ベッドから毛布を持ってきてエルドにかける。
気持ちよさそうに口を開いて寝るエルド。
「・・・・・・せっかくの色男が台無しですよ。」
とエルドの髪をなでる。
外を見ると真っ暗だ。
そっと部屋のドアを開ける。
周りには誰もいない。
きっとエルドが部屋にいるから
見張りは席を外してるんだろう。
明日の朝までノインが
無事でいる確証はない。
明日の任務には
連れて行ってもらえない。
見張りがいない
今しかチャンスはないだろう。
よし、行こう。
と覚悟を決めて
フィンは忍び足で暗い廊下を歩く。