第9章 微熱を帯びたお酒
「冷めないうちに、フィン、食べよう。」
くすくすとエルドが笑いながら
向かいのソファーに座るように手招きする。
フィンはベッドから降りて
ソファーにトンっと腰を落とした。
「いただきます。」
とエルドと同時に手を合わせ、食事をとり始めた。
エルドは明日の天気とか、
最近嗜んだお酒の話をしてくれた。
他愛もない話をして、
一般女性と話すように扱ってくれる。
お互いに食事を終えエルドは
まだ当たり障りのない話をしてくれていた。
そんな優しい空気を壊したのはフィンだった。
「エルドさんは昨晩、
作戦に参加してなかったんですか?」
唐突な質問にエルドは目を丸くする。
「参加してたよ。」
「じゃあ昨日の私を見ましたよね。
なんでそんな優しくしてくれるんですか。
私は暗殺者なのに。」
フィンは淡々と話す。
エルドが小さく噴き出した。
「・・・笑うとこじゃないです。」
フィンは笑うエルドにつられて
微笑みを漏らした。
「やっと笑った。」
エルドの嬉しそうな声色で話す。
「昼間、フィンを見た時に
昨日の義賊だって話を聞いた時は正直驚いたよ。
こんなに可愛い義賊がいるのかってね。
俺は昨日、兵長の近くで待機してたんだけどね」
苦笑いを浮かべるエルド。
兵長にまかれちゃって
追いつけなかったんだ。
と俯いて話した。
「こんな可愛い義賊になら
俺も盗まれたいって思っちゃったよ。」
フィンは顔を真っ赤にする。
「それに殺意を微塵も感じないし、
こんなに素直に反応する人が暗殺者なわけないだろう。」
とまぶしい笑顔でエルドは話す。