第9章 微熱を帯びたお酒
しばらく時間が経った。
夕焼け空に星たちが見え始めたころ。
コンコン______
ドアがたたかれた。
フィンは黙ってドアを見つめた。
「食事を持ってきたんだが、入っていいか?」
と男性の声がする。
「・・・・ごめんなさい、
いりません・・。」
ガチャ。
ドアが開いて食事が乗ったプレートを片手に持った
男性が入ってきた。
「・・・そう言わずに一緒に食べよう。」
長身の後ろに髪を束ねた人物の姿が目に入る。
昼間に部屋に来たエルドと呼ばれていた人物だった。
エルドはソファーに腰かけて食事を並べ始める。
「・・・・・ありがとうございます・・・。」
と不本意ながらフィンはお礼を言う。
エルドはフッと笑みを返す。
「食堂の雰囲気が最悪でね。
ハンジ分隊長も苛立ってるし、
モブリット副長も明らかにへこんでるし。
リヴァイ兵長なんか殺気立って
周りの兵士がみんな避けてるよ。」
とフィンに笑いかけ話す。
フィンは思い当る節しかなくて、
顔をしかめた。
「だから、ここに逃げてきた。
どうせなら美人と食事したいだろう。」
といかにも女性の扱いを心得てそうなエルド。
お世辞と分かっていても、
率直に言われると恥ずかしくなる。
フィンは少し赤くなった顔を隠す。