第8章 理由と意地
「ファーランに‥‥もう会えないなんて……
ちゃんとお礼も言えてないのに……悲しい‥‥」
と嗚咽交じりに声を漏らす。
「でももっと哀しいのは‥‥
リヴァイさん。
貴方が泣かないから‥‥
そんな顔をしているのに涙を流さないからッ。
‥‥一人で抱え込まないでください‥‥。」
リヴァイの頬にそっと手を添える。
リヴァイもフィンの小さな手に手のひらを重ねる。
「‥‥フィン‥…お前の遺された命、俺に預けろ。」
三白眼が強く光を放つ。
重ねた手が強く握られた。
「‥…フィン調査兵団に入れ。
お前を憲兵団になんかに渡しはしない。」
「‥‥……」
フィンの返事はない。
肩を震わせてただ涙を流しているだけだ。
戸惑うのも無理はないだろう。
調査兵団は死亡率が圧倒的に高い。
いくら立体機動装置の腕が立つからと言って
好き好んで入る奴など多くないだろう。
リヴァイの脳内を様々な憶測が飛び交う。
戸惑っててもいい。
俺は待とう……。
お前が答えを出すまで……。
そっとフィンの瞼にリヴァイは
やさしく口づけを落とす。
フィンの心臓は激しく音を立てる。
リヴァイ鍛えられた胸板に顔をうずめる。
石けんの匂いと体温が心地いい。
なによりフィンの心は安心感に包まれていく。
リヴァイの鼓動も早くなっていくのが伝わってくる。
二人の鼓動だけが部屋に響いてるんじゃないかと
錯覚させるほど心音が耳に残る。
コンコンッ______。
ドアをノックする音が響いた。