第8章 理由と意地
リヴァイの瞳は大きく見開き、
窓の外をどこか遠くを眺めている。
まさかな……アイツか……?
いや、そんなハズはないだろう……。
リヴァイは名前を思い出すだけで胸が引き裂かれそうになる人物を思い出していた。
あの日の選択を……何度考えたことか。
何日も夢に思い出しうなされた。
リヴァイが唇をかみしめながら
「その恩人の名は・・・?」
と苦しそうな声色を漏らした。
フィンが苦悩に歪んでいるリヴァイの顔を見ながら
「・・・・ファーラン。」
とつぶやく。
あの日の光景が脳内を稲妻のように鮮明に駆け巡る。
初めて壁外に出た時。
たった一度三人で外を馬で駆け抜けた。
こんな日がずっと続くと思っていた。
忘れもしないあの日の巨人の血を浴びた屈辱を。
リヴァイがフィンに見えないように顔をそむける。
肩を震わす。
フィンは、吸い寄せられるように
リヴァイに足元をふらつきながら近寄った。
そっとリヴァイを優しくか細い腕で抱きしめる。
泣くことを拒否して唇を噛みしめ吐息を漏らすリヴァイ。
フィンはただ黙って抱きしめる事しかできなかった。
時々肩を震わせるリヴァイの頭をフィンはそっと優しく撫でる。
柔らかい黒髪からはふんわりとリヴァイの石けんの香りが漂った。
しばらくすると
「仲間‥‥だったんだ。」
リヴァイが絞り出し消えそうな声で話す。
フィンはリヴァイとファーランが
知り合いだったことに驚いた。
フィンはゆっくりとただ首をコクンとうなづいて
リヴァイの声に耳を傾ける。
「・・・・っ。
ファーランは・・・巨人に食われた。
俺にはわからない・・・ずっとそうだ・・・・。
自分の力を信じても・・・
信頼に足る仲間を信じても・・・
・・・結果は誰にもわからないんだ・・・。」
フィンはリヴァイの嗚咽交じりの告白聞き、
ファーランが死んだこと、リヴァイの哀しみにフィンが涙を流す。
我慢していた涙が溢れ出す。
頬伝い、リヴァイの肩を濡らす。
リヴァイの引き締まった腕がフィンの細い体を抱きしめた。
「・・・・なんでお前がそんなに泣くんだッ・・・」
眉間にしわをよせ、リヴァイがフィンの顎を上げる。
フィンは止めどなく涙があふれる瞳をリヴァイに向ける。