第2章 淹れたての紅茶
地面の落ちている、小さな紙きれなようなメモを拾い上げると見慣れた羅列した文字が目に入る。
拾ったメモを見ながら、
メガネをかけた女性に手渡し返す。
「もしかして【レ・ティアー】をお探しですか?」
とフィンは首を傾げながら女性を覗き込んだ。
眉間にしわ寄せていた男性の表情が
一瞬やわらかくなったように感じた。
「ぶつかっちゃってごめんね!!
そのお店探してて!知っているの!?」
とメガネを嬉しそうに光らせてガシッ!肩をつかまれる。
好意が溢れ出てる距離感の近いスキンシップに戸惑いながら
「私のお店なんです。よかったらご一緒に」
と言いかけたところで
「えぇ!!いいの~!ありがとう!
すごい偶然だねぇ!!」
と明るい声に遮られてバシバシ!と勢いよく肩を叩かれる。
悪い人じゃないけどちょっと変わってる女性だなぁ…とフィンは笑みを浮かべる。
店に向かいながら女性と軽く自己紹介をした。
かなりフレンドリーに接してくれる、
気さくな女性はハンジという名前だと教えてくれた。
見た通り調査兵団の兵士だった。
男性は二人の後ろ姿に冷たい視線を向け腕を組みながら静かに後をついてきた。
店につくと鍵を開けて
カランカラン_______
ドアのベルが鳴らしながら、優しい香りが漂う店内に二人を招き入れる。
「ほぅ‥‥紅茶以外も揃っているのか。
製法が‥‥何か違うのか?」
と質問が飛んできて、少し驚いた。
店内に入って香りを嗅いだだけですぐにその質問をするのは間違いなく無類の紅茶好きの証拠だった。
男性からの似合わない質問にフィンは少し驚きながら
「はい。そうなんです。
焙煎の仕方にこだわりがありまして」
と他店と違うこだわり製法の説明を続けた。
興味深そうに説明を聞くと男性は店内をゆっくりと見て回り始める。
調査兵団と言えばわざわざ壁の外に出たがる”変人の巣窟”なんて言われようの集団だが私の目の前にいるのは普通の人間だった。
その”変人”たちは自分の店で紅茶を嬉しそうに選んでいる。
いつも来る客と変わりのない普通の人間だ。
フィンは、頬を緩ませながら二人を見守った。
「ねぇリヴァイ。これなんかどうかな?」
とハンジが口を開いて手に持った紅茶の袋を男性に見せる。
ん?リヴァイ?
どこかで聞き覚えのある名前の気がする。