第6章 別れと再会
フィンは一人街を走り回る。
調査兵団の宿舎はヤルケル区にない。
飛び出したものの行く先が決まらず、
ただひたすら調査兵団の姿を探した。
誰か一人でも会えたら、全て話そう。
ふと、憲兵団の宿舎近くにもしかしたら、
滞在しているかもしれない。
と思い大通りから小道に進路変更して走っていく。
後ろから誰かがついてきている。
小走りから徐々にスピードを、あげていくフィン。
一刻も早く調査兵団の元にたどり着きたいその思いで駆けて行った時、
見覚えのある顎髭の背の高い男性が腕組みしてこちらを睨みつけて立っていた。
昨夜のただならぬ殺気を放っていた人物だ。
あまりの殺気に引き返そうと後ろを見ると、
後ろには息を切らした男性が肩を揺らせ、立っている。
昨晩のうぶそうな優しい面構えの男性が
膝に手をつき前かがみになりながらこちらを見上げていた。
「あっあの……」
とフィンが口を開いた瞬間。
腕と腰を掴まれてバランスを崩された。
フィンは宙を舞う。
ドシンッ!!!
鈍い音が人通りのない路地に響き立った。
まだ昨夜の疲労が蓄積されているフィンの体に受け身の取れていない見事な投げ技が決まった。
痛みで息ができないフィンに
「お前の匂い覚えたっていっただろう。」
ふっ。と鼻を鳴らす顎髭の男性が
フィンの上に乗り膝で両手を押さえつけ拘束する。
息を切らしながら
「ミケさんッ!!
いきなり女性を投げ飛ばすなんて!!」
と声を荒げながら近寄ってくる。
ミケと呼ばれる顎髭の男性は、
「こいつの匂いは昨日の義賊の匂いだ。
モブリット、こいつを見てみろ。この髪色を。」
強引にフィンの髪をつかみ押し付けていた地面からひき上げる。
フィンは
「・・・痛ッ・・。」
と小さく声を上げた。
髪をつかまれてモブリットという優しい目をした男性と目が合う。
「だからってそんな・・・・」
とたじろぐモブリット。