第4章 それぞれの願い想い
事の始まりは_______
地下街を救うため、孤児院の子供を救うため。
金が必要だった。
フィンには貴族から奪った金品
ぜんぶ地下街の住人に渡していることにしていた。
だが盗品を金に替えることは
〔代償〕を払わなければならない。
最初はごろつきたちと取引して換金していたが、
段々とごろつきが足元を見始めた。
ハーブの培養知識を使って
媚薬の精製に手を伸ばした。
今思えばそこが人生最大の過ちだった。
最初は依存性の軽いハーブの媚薬を作っていたが、
瞬く間に貴族からごろつきにまで流行してしまった。
そこである大物に目をつけられてしまった。
シャコール・ハイドルフ議員。
王政にかかわる権力者だが裏では
憲兵団や商会と癒着があり、街のごろつきさえも従える。
そんな奴が一般人の金品の出どころを
調べることは簡単だった。
酒屋も紅茶屋もフィンもすべて人質の材料にされた。
シャコールに絶対服従を強いられる。
もっと依存性の高い薬物の精製をさせられた。
俺からの唯一の条件として
フィンに一切かかわらせないこと。
それだけを糧に耐えてきた。
そしてニコラス・ロヴォフ議員が
調査兵団、団長のエルヴィン・スミスの手引きによって直訴された。
シャコールは自身の身を案じ、
目障りなエルヴィン・スミスを殺せという。
フィンに暗殺させるように命令を下す。
当然、断ったが、
フィンのことを世間に公表すると脅してきた。