第4章 それぞれの願い想い
{ Noin.Side. }
嘘をついてずっと黒く塗り潰してきた想い。
幼いころから、想い続けてきた。
ある時、不意に思ってしまう。
愛になれないままこの恋は終わるだろう。
二人で一緒に過ごす時間が幸せで辛いものだった。
いっそのこともう二度と逢わない方がいいんだろう。
言いたくて言えなかった。
フィンを哀しませたくないから。
未来よりも、自分の幸せよりも、
この期限付きの恋を大切にした。
でも最後にはきっと俺が
フィンを傷つけるだろう。
いっそのことフィンの
心を深く傷をつけて俺のことを忘れないでいてほしい。
一度だけフィンから離れようとしたことがある。
「独りにしないで」と泣きながら、
フィンが流した涙。
俺の為に流した涙を見て、
もしかしたらここからこの恋は愛になれるのだろうか?
と錯覚した。
ほのかな淡い期待を抱き、
離れ方を知らないふりをした。
フィンがいなきゃ
俺の世界は簡単に崩れ終わるだろう。
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ほかの人と同じようにそれなりに恋愛を経験してみた。
肌も何度か重ねたこともある。
自分に想いを寄せてくれる恋人と過ごしていても
フィンをずっと想い重ねていた。
手をつないで歩く時も、
一緒に食事を食べてたりしている時も、
抱き合って肌を重ね合わせた時さえも。
虚しい想像上のフィンが片時も離れずに心の中にいる。
恋人のように肩を寄せ手をつないで街を歩けたら
どんな笑顔を見せるのだろうか。
どんな話をするだろうか。
肌を合わせたら、
どういう声で鳴いてくれるのか。
どういう表情を魅せるのか。
どういう言葉を遣うのか。
受け入れてもらえるなら、
どんなに幸福なことなんだろうか。
代役と過ごしても虚しさが増すばかりで
ますます女のことが嫌いになった。
フィンだけがいればいい。
いつか終わる恋だとしても。
俺はそばにいることを選び続けた。