第1章 過去と出逢い
845年_______
ウォール・シーナ壁内・ヤルケル区
星たちが消え朝焼けが世界を明るく満たしていく。
いつもと変わらない穏やかな朝を迎える街並み。
代り映えのない光景が瞳にうつり孤独を和らげてくれる。
ウォール・シーナの無機質な高い壁。
ちらほらと人々の活気にあふれていく、ヤルケル区の街並み。
しばらく街並みを見つめる。
ドンドンッ________
朝早くにフィンの部屋のドアがたたかれた。
ガチャリ______
扉を開けると、心配そうに
こちらをみているすらりとした長身、長髪の男性が立っている。
何も言わずに温かい大きな手がフィンの頭に置かれる。
「おはよう。早起きだね。」
作った笑顔を立っている男性に向ける。
「歌ってただろう・・・・。大丈夫か?」
と優しく問われる。
眉間にしわをつくる男性。
「大丈夫だよ。」
置かれた手をフィンの小さな手がぎゅっと握る。
「泣くぐらいに怖いなら呼んでいいんだぞ」
少し笑いながらフィンの頬涙の跡を細く長い指先がなでる。
「もう、大人だから大丈夫だもん。」
とフィンは頬を膨らませて、立っている男性を見上げる。
「ほら、そろそろ支度しないと遅刻だぞ」
「わかってるよ、
”心配性のお兄ちゃん”だね」
っといたずらにフィンは笑ってドアをそっと閉めた。
パタン_____