第4章 それぞれの願い想い
合図の信煙弾が上がった方向に全速力で向かう。
都合の悪いことに待機してた場所から離れた位置に赤く煙が立ち上った。
向かう先々で、義賊にまかれたのか、まばらにいる仲間たちが義賊の逃げた方向へと俺を導いてゆく。
「兵長!あっちです!」
「リヴァイ兵長が来た!」
地下街のごろつきをゴミのように睨んでいた調査兵団の奴らは勝手に今は俺を英雄扱いしやがる。
完全に動けなくなっているが、致命傷もなさそうなので無視してありったけガスを使い夜空を駆け巡った。
自分の全力に応えるかのように、義賊も全力で空を舞う。
今まで自分と対等に空を飛んでいた奴がいただろうか。
リヴァイの動きについてこれるものなど調査委兵団の精鋭でもいなかった。
堕天使の異名を持つ理由を理解する。
そしてエルヴィンが欲しがる力だと確信した。
必ず調査兵団に迎え入れよう。
飛びまわりながらリヴァイは心に強く誓った。
二人だけの微速度の世界がなぜか心地いい。
体当たりをいつでも背後からかけられる距離まで詰めた。
が、あまりにも速すぎるのが厄介ごとだった。
この速さで突っ込めば二人とも多々じゃ済まないだろうと
背後から狙いを定め、義賊のガス切れを待つことにした。
そのとき義賊が体を無理やり方向転換し俺に向ってくる。
とっさに刃に手をかけたが、相手からの殺気など微塵も感じない。
必死に向かってくるまなざしは、俺自身を守る目をしていた。
空中でぶつかった衝撃はすさまじかった。
全身の骨がきしみ悲鳴を上げる。
ドオォォォン!!_________
けたたましい銃声が聞こえる。
立体起動装置に金属音が鳴り響き
同時に激しい雨が降り始めた。
雨と月の光がなくなった空では視界が悪い。
空中で回りながら、突然近づいた屋根。
自分の胸に飛び込んできた恩人を無意識に、強く抱きよせた。
守ろうと腕の中に包み込む。
頭が割れるほどの衝撃で意識が遠くなった。
硬く冷たい屋根の上に二人で倒れこむ。
薄れゆく意識の中で恩人の無事を確かめようと力を絞り出して体を起こす。
雨脚は強く体の重心を崩してしまった。
クソッ。これが俺の”終わり”か。
薄れゆく意識のなか、死を覚悟した。
深い闇のなかに堕ちていく。
消えかけた意識の中で、天使をみた気がした。
冷えきった手にぬくもりを感じた。