第4章 それぞれの願い想い
{ Levi.side. }
黒い雲が覆われた空を見上げながら
リヴァイは嫌な予感がすると
感覚を研ぎ澄ませ合図をひっそりと待っていた。
__________舞踏会の前。
豚共(貴族)がいくら喚こうが、義賊が捕まろうが、殺されようが自分にとって心底どうでもよかった。
舞踏会の前夜、エルヴィン野郎から義賊の情報を聞かせれた。
俺の考え方はが大きく変わった。
義賊が奪った金品で孤児院や地下街の住人に食事や衣服、金を配っている噂話を聞くまでは。
地下街ではただ地上・上を目指すこと、
それが唯一の生きるための希望だった。
今自分がこうしている間にも、まだ地下にいる仲間の大勢は
太陽の光を自由に浴びることさえ許されていない。
太陽の光が足りずに命を落とすもの。
不衛生な水を口にし、病気になるもの。
飢餓に苦しむもの。
醜い争いで地下の住人、取り残されている以前の仲間は
命を散らせていることだろう。
誰もが掃溜めの地下の存在を無視した。
下層の人間など家畜以の存在だった。
そしてやっと思いで地上に出ても、住むことも許されず、壁を超えることもできず暗い地下に堕とされた。
優しく手を差し伸べる人の存在など一切無かった。
そんな地下街の住人にとっての唯一の希望・天使のような存在を奪うことが最善の選択なのだろうか。
エルヴィンは
「リヴァイ、お前自身の選択に委ねる」
と命令した。
憲兵団に捕まったら酷な拷問に合った挙句、辱めを受けて
貴族の豚どものために晒され絞首刑台行きだ。
地下街に手を差し伸べた唯一無二の恩人にそんなことがあっていいだろうか。
いや、あっていいはずがないだろう。
せめて調査兵団か、自分自身の手で捕まえることができれば、エルヴィンが自分にしたかのように
調査兵団に引き入れ、恩人の命を救うことができるのではないかと考えた。
選択肢のなかで、これが恩人にとって最善の選択だと思った。
いや、自分にしか捕まえることができない。
そう確信している。
だから俺は自分の悔いが残らない方を選ぶ。
『堕天使は必ずこの俺が捕まえる』
自身の心に誓いトリガーを持つ手に力が入る。
合図の赤い信煙弾が空へと高く上がった。
必ずこの手で捕まえる。
旋風のごとく、全身全霊で夜空を駆け巡った。