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≪進撃の巨人≫ 蒼翼の天使 

第3章 堕天使の舞踏会



プシュッ______

エルヴィンの顔に執拗に甘ったるい花の香りが
まとわりついた。



突然の甘い匂いにむせ返る。
エルヴィンは息を止めるが、ぐらりと視界が揺らぎバランスを崩し倒れ込んだ。



エルヴィンが薄れいく意識のなか、フィンに手を伸ばす。


ぷつりとエルヴィンの視界は、深い暗闇に堕ちていった。






フィンは、慌てて駆け寄ってきた男に腕を掴まれた。



「あなた!!団長に何をしたんですかっ!」
と声を荒らげる長身・細身の男性だ。


栗色の瞳から驚きと怒りの彩がにじんでいる。


「なんのことだかっ………
キスしたら倒れてしまったんです。」
と腕を掴んでいる男性に瞳をうるませながら、
上目遣いで困惑したような声色で話した。



男性が仮面の下から見える、頬が赤く染まっていく。

嘘を並べる自分に嫌悪感を抱くが、
この善人そうな男性からもまた逃げなきゃいけない。


掴まれた腕を痛む仕草を見せると、
男性はすかさず腕を解放する。

きっと根っからの優しい男性なのだろう。
純粋そうな男性を騙す自分にさらに嫌気がさした。


人が倒れたので、外野がひしめき合い
こちらの様子を観察している。


フィンが貴婦人たちに
「エルヴィン団長が倒れてしまったわ。
どなたか介抱してさしあげて。」
と言い放つ。


エルヴィン・スミスの整った容姿は、
貴婦人方の間で絶大な人気を誇っていた。
ぷんぷんと香水の匂いをまとった貴婦人たちが、我先にと倒れているエルヴィン・スミスに郡をなして群がった。




群がる貴婦人たちを前に、先ほどの純真無垢な男性が
一人倒れこんでいるエルヴィンを死守している。




フィンは視界に入ったエルヴィンの苦しそうな表情に違和感を覚えた。

体の自由を奪い、眠るだけなのになぜ、
息も絶え絶えな表情を浮かべているのだろう。


違和感を感じていた、その時。
背後からただならぬ殺気を感じた。

振り返るともう一人、
鋭い眼光を放つ人物がこちらに歩いてくるのが見える。


大柄な彼もまた調査兵団の一員だろう。
もう振り切る術がない。


エルヴィンの苦しそうな表情が気になり
罪悪感を抱えながら
フィンはドレスを両手で持ち上げ、
ダンスホールをヒールを鳴らしながら足早に駆けていった。



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