第20章 悪戯と祝杯
「ふん……、おいしいこのワイン」
フィンは嬉しそうにワインを飲みほしていく。
「おいおい。
そんなに飲み方するのか?」
フィンはワインを注ぎながら
「私、あれくらいじゃ全然酔わないので‥‥」
また一口グラスに唇をつけワインを嗜む。
「‥‥‥‥‥それでもたいがいにしろ‥‥」
リヴァイが口元を緩めながら軽い溜息を吐く。
「ふふ。はい、わかりました。」
「リヴァイさんの好きなこと教えてください。」
「‥‥‥好きなことか‥‥
特にない‥…」
「非番の日はなにもしてないんですか…?」
リヴァイはワイングラスを傾けながら考え込む。
「‥…掃除だな。」
「へ?掃除ですか‥‥?」
リヴァイの回答に驚く。
リヴァイの部屋を見渡す。
今まであまり気にしなかったが、確かに隅々まで掃除が行き届いて綺麗だ。
窓もほかの部屋よりピカピカと輝きを放っている。
四隅にはほこりやチリなど微塵もない。
ベッドを見るとシーツはピシッと綺麗に伸ばされていて、
かけられている兵服もしわ一つなく姿勢よく並んでいる。
ティーカップ、紅茶の袋、食器類も正面を向いて整理整頓されている。
「リヴァイさんの部屋、たしかに男性っぽくないですね。
兄の部屋とは大違い」
ついノインのことを口走ってしまった。
フィンは口をつぐむ。
「‥…お前が話したいなら聞こう。」
「兄……ノインの部屋はもっとぐちゃっとしてました。」
くしゃりとリヴァイに笑いかける。
「‥‥そうか。」
リヴァイの唇にワイングラスが触れる。
そっと一口ごくん。と飲む。
「‥…あの部屋もなくなっちゃった。」
「‥‥あぁ。」
リヴァイは静かにフィンの頭を自分の胸に引き寄せる。
フィンもリヴァイの胸に身を任せ力を抜く。
リヴァイの心音に耳を澄ます。
心地いいリズムを刻んでいる心臓は少し早く動いている気もする。
「‥‥‥リヴァイさん。」
「なんだ。」
「助けてくれてありがとう‥‥。」
「‥‥‥もう聞いた。
それにそんなこと気にするな。」
「リヴァイさんにそんなことでも‥‥
私にはすごいことですよ…」
「お前も俺に同じことをしただろう。」
「…そうですね。でもリヴァイさんが無事でよかったです。」
フィンはそっとリヴァイの白い指先に自分の指を重ね合わせる。