第20章 悪戯と祝杯
「お前、誰でもたぶらかすのはやめろ。」
ミケの腕を振りほどいて、リヴァイの元へに駆け寄る。
「たぶらかしてないですッ。」
フィンは赤面したままリヴァイを見上げた。
リヴァイが眉間に深いしわを寄せ、
大きなため息を吐く。
「・・・・・もういい。行くぞ。」
「あ・・・・はい。」
そうだ、リヴァイ兵長の部屋に寄るんだった。
と思いだし、
「ミケさん、おやすみなさい!!」
と言い残し食堂を後にする。
「・・・・・俺の部屋には来ないのに、
リヴァイの部屋にはいくのか・・・。」
一人肩を落としながら、ミケは暗い食堂で呟いた。
フィンの残り香がミケを虚しくさせた。
リヴァイの背中について行く。
後ろから見ても不機嫌さが伝わってくる、リヴァイの全くこっちを見ないままどんどん廊下を突き進んでいく。
リヴァイの後を早足でフィンはついて行く。
リヴァイさんは怒ると、私のことをお前って呼び名を変える。
最大限に怒っている時は、ガキ呼ばわりする。
本人は無意識なのか、わざとなのか、わからないけどこうして怒っている時だけわかりやすい。
フィンは深くため息を吐く。
フィンって名前を呼んでくれるときは少しはリヴァイから愛情を確かに感じるのに、リヴァイの気持ちの真意がわからない。
困惑した表情を浮かべ、リヴァイの後追い、部屋に入っていった。
部屋に入るなり眉間に深くしわ寄せ、こちらをリヴァイが覗き込む。
「おい。そんなに部屋に入るのが嫌か?」
「…‥‥そんなことないです」
「あぁ?‥…なんだその面は」
「いえ、別に‥‥。」
リヴァイの鋭いまなざしがフィンに突き刺さる。
いまにも縮み上がりそうだが、フィンもリヴァイから視線を外さない。
ふと、リヴァイの前髪が目に入る。
リヴァイ兵長の前髪って黒くてきれいだな‥‥。
違う違う、見とれてる場合じゃない!
緩んだ表情を引き締めフィンは、リヴァイの顔を見つめなおす。
リヴァイはぱっと視線をずらす。
「‥…なんで顔そらすんですか?」
フィンはリヴァイの前に回り込む。
リヴァイはまた反対を向き顔を背ける。