第20章 悪戯と祝杯
エルドの後に続き、フィンも廊下を進んでいく。
食堂は明かりが消えていて薄暗い。
「フィンこっちだ、
足元気をつけろ。」
ミケの声がする。
「エルドさんは・・・?」
フィンは薄暗い中、
目を凝らして歩いていく。
「・・・・・きゃッ。」
フィンは足元の椅子の脚につまずく。
ミケの腕フィンの声に素早く反応して、受け止める。
フィンを抱きしめる。
「・・・・言ったそばから危ないな・・。」
「・・・・すみません。」
ミケの鼻息が聞こえる。
「・・・・フィン、甘い匂いがするぞ?」
「・・・・そうですか?
ミケさん・・・嗅ぎすぎです…。」
フィンはミケの腕から逃れようと身体をねじる。
ミケの巨体がフィンをすっぽり覆う。
「・・・・ミケさん、離してください・・・」
フィンの顔にまた熱が集中する。
視界の悪い世界の中、感覚が過敏になっていく。
「ミケさん・・・・。」
ミケの返事がなく、フィンは不安げに声を出す。
テーブルにそっとグラスを置いてミケの長く筋肉の引き締まった腕をフィンは手でぽんぽんとなだめる様に叩く。
「・・・・ミケさん離して・・?」
「もう少しこのままでいさせてくれ。こうしているだけでも癒される。」
ミケがフィンの耳元でスンスンッと鼻から匂いを吸い込む。
フィンの首元深く顔をうずめるミケ。
「‥…エルドさんが戻ってくるんじゃ‥…。」
「アイツは戻ってこない。外に捨てに行ってから
そのまま部屋に戻った‥‥‥と思う。」
「やっぱり誰か来るかも‥…。」
フィンの心臓はまた、うるさくなりはじめる。
おさまった体の芯は熱を帯びてくる。
ミケはスンスンッ。と嗅ぎながらフィンの柔らかい胸元に顔をうずめる。
「ミケさんッ‥‥…やぁッ。」
「オイ。」
食堂の入り口から唸るような低い声が聞こえる。
フィンは慌ててミケの腕の中から出ようとする。