第20章 悪戯と祝杯
フィンがだれもいない壁に向かって
シャンパン口を向けて
スパンッ!
瓶口を飛ばす。
ポン!と音が鳴り、
シャンパン口が開いた。
一同がフィンに拍手を送る。
フィンがエルヴィンのもとへ歩み寄る。
口から心臓が出そうになりながら、
何とか気持ちを落ち着かせ、
シャンパンを注ぐ。
「ありがとう。」
とエルヴィンの言葉に
「いえ。」
と顔をそらし、ハンジのグラスに注いでいく。
順々に注ぎまわり、最後に自分のグラスに注ぐ。
ぴったりシャンパンを注ぎ終わる。
「ほんと・・・フィンお酒好きなんだね。」
とエルドは目を輝かせた。
「ふふっ。
エルドさんにはバレちゃう。」
と笑顔を向ける。
この面々のなかでフィンと
エルドは一番の酒好きだろう。
「フィン。
キミの訓練兵入団を祝って」
エルヴィンが乾杯の合図を出す。
『カンパイ!』
カチンカチンとグラスを鳴らし
みんなで飲む始める。
「くぅ~~!うまい!!
こんなにおいしいシャンパンを飲んだのは
エルヴィンが団長になってからだね!!」
とハンジが笑顔をエルヴィンに向ける。
「あぁ。一年ほど前か・・・・
早いものだな・・・。」
エルヴィンが感慨深くグラスを
見つめながら呟いた。
「シャーディス団長、じゃなくて教官、
元気かなぁ。」
モブリットが呟く。
「あ・・・・シャーディス教官って
調査兵団の・・・・そういえば新聞で・・・。」
フィンが口元に指を添えながら呟く。
「あぁ。元調査兵団の団長だ。
おそらく彼が一番厳格な教官だろう。
だからこそ、フィン。
キミにはそこに行ってもらう。」
エルヴィンの鋭い視線がフィンを捉える。
「・・・・はい。」
「何か不満か?」
「あ・・・・いえ。
そんなことはないです。」
フィンの目が泳ぐ。
「酔っているのか?」
エルヴィンが目を丸くする。
「みたいです・・・。」
フィンはいい言い訳が思いつかずに
酔っていることにする。
「えぇ?そんなわけ・・・・」
エルドが目を丸くする。
「やっぱり疲れてるの?」
モブリットがフィンに心配そうな顔を向ける。
「・・・いや、やっぱり酔ってないです。」
フィンは一気にシャンパンの
入ったグラスを空けた。