第3章 堕天使の舞踏会
ダンスホールにフィンとエルヴィンが広間に着くと
待ち焦がれていたかのように、指揮者が棒を高らかに振り上げる。
ゆったりと管弦楽団が悠々とした音色を奏で始めた。
情趣のある前奏がホール全体をやさしく包み込む。
音楽に合わせてキラキラと鮮やかなシャンデリアも、
明るさを落としうつらうつらに淡くなっていく。
ホール全体が薄暗く艶めいている。
フィンはリードされていた手をするりと離し、
エルヴィンと正面に向き合った。
いつか読んでもらったおとぎ話の絵本に描かれていた、お姫様と王子様のダンスシーンを思い出す。
エルヴィンの前でゆっくりとフィンが両手でドレスをふわりと広げながら艶を含んだ瞳で見上げ深く一礼をする。
エルヴィンも胸元に手を当て深みのあるお辞儀を返す。
仮面の下から覗く蒼い瞳は紳士的にフィンをやさしく見守っているようでしっかりとフィンの動きを捉えている。
互いに呼吸が自然に合い、再び熱を帯びた指先が重なり合う。
音楽に合わせ、ゆらゆらと横に揺れ動く。
エルヴィンのリードでフィンが
くるり、くるりとドレスを揺れ広げながら舞い踊る。
ターンしてエルヴィンに後ろから抱え込まれるかのように
すっぽりと腕のなかにおさまった時。
「……よければ1つゲームをしませんか。」
と一言提案してきた。
フィンは、首を傾げながらエルヴィンの顔を見上げ
「……いいわ、どんなゲームか楽しみだわ。」
と妖艶な笑みを浮かべながら返答する。