第3章 堕天使の舞踏会
周りの人々から頭一つ分、
飛び出た背の高い男性が拍手をして近寄ってくる。
黒いタキシードに身を包み、
堂々たる体つきの人物を人々が避ける。
そして蒼い目を光らせフィンを
真っ直ぐに見据えている。
「誘惑的な余興を魅せてもらった。
実に愉快だった、ありがとう。」
と言いながら、フィンの前で深くお辞儀をして魅せた。
金髪屈強な体格の男性。蒼い瞳。
エルヴィン・スミス、調査兵団団長で間違いないだろう。
やっぱり紛れ込んで出逢ってしまった。
フィンは小さく溜め込んだ息を吐く。
じっと視線を重ね合わせる。
仮面の下からも、人の上に立つべき相が見える。
重厚感のある威圧感をも兼ね備えた風格を感じ取る。
蒼い瞳は何かを見透かしているかのように、澄んでいる。
吸い込まれそうな綺麗な瞳から目が離せない。
「一曲踊っていただけますか?」
と低く堅実な声で囁かれる。
エルヴィンの逞しい手のひらが差し出され甘い罠へと誘ってくる。
フィンも、誘い込むかのように不敵な笑みを浮かべる。
差し出された大きな手に黒いレースに包まれたフィンの華奢な手をそっと添える。
フィンはエルヴィンにリードされながらダンスホールに導かれる。
カツン____
カツン____
ヒールの音はゆっくりと人ごみをかき分け進んでいく。