第19章 鍛錬と看板娘
「じゃあ。私たち行くね。」
おじさんとおばさんに挨拶をすませ、
馬車に乗り込む。
見えなくなるまで
おばさんたちは手を振ってくれた。
フィンも馬車の中から手を振る。
馬車はすぐに角を曲がり、
いつもの街並みを窓に映し出す。
街灯が明かりを灯している。
気が付かば星たちが見えている。
長い時間付き合ってもらったとフィンは気づく。
「二人ともありがとうございました。」
深々とお辞儀をする。
「全然。楽しかったよ。」
エルドは嬉しそうに酒の入った木箱を眺めていた。
リヴァイは腕組をして窓を眺めながら
「‥‥あぁ。」
と返事を返す。
フィンも馬車の中の木箱に目を落とす。
気持ちに区切りがついた。
また前向きな気持ちになれた気がする。
灯のついた街並みをみながら、
馬車はゆっくりと進んでいく。
「お前、今日部屋に来い。」
リヴァイの突拍子もない発言に顔が赤くなるフィン。
「‥…え」
「なに、期待してやがる。」
「‥‥‥…?」
「帰ったら金を渡す。」
「あっそうですよね。」
フィンは赤くなった顔を隠す。
エルドが顔を覗き込む。
「‥…フィン?」
「私、今日はどこで寝ればッ‥…」
「‥…さぁな。エルヴィンに聞け。」
「ですよねッ‥…。」
「帰ったら団長に相談しよう。」
エルドが優しく微笑む。
フィンはこくこく頷き、窓の方に視線をずらした。
窓に反射する顔は赤い。
落ち着かなきゃ…と言い聞かせながら
窓の景色を覗き込む。
見慣れた調査兵団の宿舎がうつり出された。
馬車が止まる。