第19章 鍛錬と看板娘
「・・・・はい、そうですよね。」
「じゃあそろそろ戻るよ、
ハンジ、フィンのこと頼む。」
エルヴィンは書類仕事をするために、
自室へと名残惜しそうに戻っていった。
ハンジに昨日の憲兵団でのやり取りを話した。
処遇が調査兵団に任されたこと、
身体が治ったら訓練兵に入団すること。
「そうだね、最初エルヴィンはすぐにフィンを
入団させるつもりだったんだ。
でもリヴァイと私が反対してね、
地下街の任務にも、反対したんだ。」
フィンの脳内に、
廊下で立ち聞きした時のことが蘇る。
あぁ、あの時、確かにリヴァイさんは
フィンって私の名前を呼んでたな・・・。
「・・・・・私、しっかりシャーディス教官に
認められてから、ここに戻ってきます。」
フィンはハンジに覚悟の決まった瞳を向けた。
「フィン、なんか変わったね。
ここに来た時よりいい顔してる。」
ハンジがニコニコ笑う。
ハンジと雑談しながら、訓練場を歩く。
「もう、これ以上は勘弁してください!!」
聞き覚えのある声が聞こえ、声のある方向に向かう。
ここでは対人格闘術の訓練をしているようだ。
「分隊長!助けてくださいッ!!」
モブリットが肩を揺らしながら
ハンジのもとへと駆け寄ってきた。
「リヴァイ兵長が‥‥」
モブリットの指さす方向を見ると、
地面に倒れているエルドの姿があった。
リヴァイの周りに兵士たちが集っている。
「兵長!次は俺の指導お願いします!」
「リヴァイ兵長!俺もお願いします。」
次々に兵士たちがリヴァイを囲む。
「まだだ!モブリットまだ終わってないぞ!」
「無理ですよ!リヴァイ兵長から短剣取りあげるなんて」
リヴァイの片手には木の短剣が握られている。
「せめて休憩させてください・・・・。」
エルドが土埃の舞った地面に倒れたまま呟く。
周りを取り囲む兵士たちを退けながら
「おい、モブリット。早く来い。」
「わかりました。行きますよっ」
モブリットが大きくため息を吐きながら
リヴァイの目の前に立ち
両手を上げて構える。
その瞬間瞬きの合間にモブリットは宙を舞った。
ドシンッ!
地面に投げられるモブリット。
リヴァイの息は一つ乱れていない。
鋭い視線がハンジの隣にいるフィンをとらえた。