第18章 馬車に揺られて
「ファーランか……。」
エルヴィンが顎に手を添え重い表情を浮かべ考えている。
眉間にはしわが入り、ため息を深くついた。
「リヴァイがまだ地下街のごろつきをしていた頃に、
私が調査兵団に引き抜いたんだ。」
「……そうなんですか」
フィンの目が大きく開く。
「ファーランはリヴァイの地下街の仲間だった。
一緒に地上に出てきた。
そして調査兵団に私が入れた。
初めての壁外調査の日は酷い雨だった。
その日は索敵陣形の試運転の日でね‥‥。」
雨のせいで視界が悪く、索敵が機能せず
多くの仲間が犠牲になり、
ファーランともう一人のリヴァイの仲間、
イザベルもそのなかに含まれたとエルヴィンは言った。
エルヴィンの肩は小刻みに震える。
フィンの心は重たくぐっと締め付けられた。
エルヴィンの仲間を思い出す時の悔しそうな口調、
噛み締めて話す仕草、
リヴァイの仲間を失った悲しみ、
自分には想像以上のものだと思うと
胸を痛めずにいられなかった。
フィンは無意識に手を強く握っていた、
エルヴィンがなだめるかの様に優しく手を握る。
「……私の判断が招いた結果だ。
調査兵団に君が欲しい。
……時に私は、私自身を見捨てる命令を
選択する時が来るかもしれない。
フィン、全ては調査兵団を生かすため、従えるか?」
「…私は……。
…………………はい。
もう覚悟は出来ています。」
フィンはエルヴィンの力の入った肩をなだめる様にそっと手を添えた。
「……ありがとう、フィン。」
ギィィィイ_______
倉庫の扉が開く音がした。
誰かが出ていった。