第18章 馬車に揺られて
入り口には堂々とした風貌の溢れる後ろ姿の男性。
後ろから声をかける、
「エルヴィン団長」
フィンの声にエルヴィンが振り返る。
エルヴィンの顔は二日酔いなど感じさせないほど、毅然とした顔立ちをしていた。
「お待たせしました!」
フィンがエルヴィンに懐っこい笑顔を見せる。
「フィン、さぁ帰ろう。」
エルヴィンの口元も自然と緩ませながらフィンをリードしながら外へと歩み出した。
ナイルに挨拶しないで帰ってしまうことに気が引けたが、
エルヴィンいわくナイルはきっと二日酔いに悩まされ自室のベッドでのびているだろうと
フィンを納得させる。
エルヴィンはすでにナイルへの手紙を書き憲兵団の兵士に渡していた。
昨日は酷く脅えていた馬たちも快晴の空、
浮き足立っているように見えた。
「さ、手を」
エルヴィンがフィンに向けて大きな手を差し出す。
「はいっ!ありがとうございます」
フィンはエルヴィンの手を取り少し緊張した様子で馬車に乗り込んだ。
二人で馬車に乗り込むとゆっくりと揺れ始め、
華やかな憲兵団の建物が遠ざかっていく。
「フィン、覚悟を決めたのか。」
昨日までとは全く違う面構えをしているフィンにエルヴィンは確信をつくように問う。
「はい。
自分の心に正直に、自由に生きてみようと思います。
もう堕天使には戻りません。」
フィンの大きな瞳は強い意志を放つ。
「私、強くなります。
そして調査兵団の仲間を今度は私が守ります。」
エルヴィンの目を真っ直ぐに見上げ、フィンは力強く宣言した。
いつか予算を使いすぎな憲兵団から贅沢な資金は正当方法で盗みますが。
フィンは笑いながら呟いた。
エルヴィンはフィンの決意、
予想外の考えに笑みを浮かべる。
「ふっ・・・いい志だ。
フィン、できる限り私も尽力しよう。」
そう呟き、フィンと握手を交わす。
フィンの小さな手は、強くエルヴィンの手を握り返した。