第15章 少女の独白
エルヴィンとフィンは馬車を降り、
憲兵団に囲まれながら
憲兵支部のなかへと進んでいく。
調査兵団の簡素なつくりとは違い、
憲兵支部には豪華な装飾が施されている。
フィンはこの豪華な装飾を見て
苛立ちを沸々とあらわにする。
この予算があれば地下街の人たちを救えるし、
孤児院で過ごす子たちに
十分な教育を受けさせることができる。
フィンの眉間にしわが入る。
目を細め廊下を進んでいく。
エルヴィンの指がそっと、
錠のかかった手をかすめていく。
エルヴィンの顔を横目に見ると
かすめていった指先は眉間を抑えている。
あっ・・・・・
私の眉間のしわのこと・・・
と理解して苛立ちを隠し
ひたむきな”か弱い乙女”をまた演じる。
内心はこの腐った仕組みに
憎悪を抱く。
自分の無力さを呪った。
広間のような、大きな部屋に案内される。
豪華な飾りが煌めく部屋のなか、
簡素な木の椅子がある。
フィンは自分に用意された椅子だと悟り
誘導されるがままに座った。
憲兵団の兵士がフィンの体を
ロープで椅子に縛り付けようとする。
「いや、必要ない。」
ナイルが口走る。
「しかし・・・」
と兵士は言いかけ口をつぐみ、
他の兵士同様に壁際に並んだ。
ナイルは大きな机に備え付けてある
豪華な革張りの椅子に腰かける。
エルヴィンは来客用の椅子に腰かけた。
豪華な机を見て
ここはナイル師団長の部屋だと理解する。
税金の無駄遣いにしか見えない。
鼻で笑いたくなるが、我慢して
瞳を潤ませ体を震わせた。
この演技力を自分で褒め称えたい。