第15章 少女の独白
馬車の中でナイルは
フィンをじっと見つめる。
殺人容疑のかかった女は自分の想像してた女とは全然違い、困惑する。
想像の中の女はそこそこ強靭な体つきをしていかにも殺人鬼のような
冷酷な顔をしているものだろうと思った。
この女性が調査兵団から物資を盗み、
地下街のごろつき、貴族を殺すことが可能なのか。
複数犯の可能性が高いと踏んでいた。
しかし、虫をも殺さなさそうに見えるこの女性に
手錠をかけていることにこちらが罪悪感を覚える。
しかも、先ほどエルヴィンがこの女性を大切に扱っているような素振りを見せた。
ただ単にエルヴィンの”いいひと”なのかと思ったが、
この無慈悲な男に愛を語る感情があるのだろうか。
ナイルの脳内にいろいろな憶測が飛び交う。
「・・・ナイル、マリーは元気か?」
エルヴィンの顔が微かに曇っている。
ナイルは、ハッと我に返りながら
「あぁ元気にやってるよ。いま第一子を身篭っている。」
そうか。
とエルヴィンが安心したような表情を浮かべる。
マリーの話をするとコイツは少し寂しそうな表情を浮かべる時がある。
まるで誰かを想いだすかのように。
そんなことを考えている間に馬車の揺れが止まった。
ナイルは赤いルビーの光るループタイを締め直し自分の感情を殺す。
尋問の時間だ。
そう自分に言い聞かせ、馬車を降りる。