第3章 堕天使の舞踏会
夕刻時______
フィンは『今夜の仕事』のため準備をする____
ノインが自信満々に選んだ衣装に思わず息を呑む。
碧くキラキラと輝いているドレスが用意されていた。
「……お姫様みたい。」
とフィンは嬉しそうに呟いた。
胸元は咲くような形で大胆に開き
背中も開いてかなり露出したデザインをしている。
腰から足元かけてペールラベンダー色の
膨らみのあるチュールレースがあしらわれており、
羽根のように軽やかに光り舞っている。
目元には濡れているかのように見える艶を塗り、
大胆に塗った鮮やかな紅い口紅が
透き通る白さの肌を際立たせる。
フィンは妖艶な存在を放っている。
昼間には隠していた白髪を
綺麗に編み込んでアップにする。
うなじにすら色気を帯びている。
ノインからもらった瓶をそっと胸元に忍ばせる。
フィンにとって
立体起動装置は自分に強さを
与えてくれるお守りのようなもの。
立体機動装置を身につけただけで
まるで魔法にかかったかのように別人になる。
夜の姿『堕天使』として変貌する。
仮面とドレスはフィンを着飾り
揺らめき本来の姿を隠す。
半面が黒く透かし模様、
半面は深紅の薔薇色の羽根の装飾が
ほどこされている仮面で素顔を隠す。
カツン ____
カツン______
ヒールの音が鳴り響く。
艶麗とした姿に、ノインも息を呑んだ。
「……綺麗だ。」
息をするみたいに自然とでた言葉。
フィンに触れたくて手をのばす。
ノインの手を掴んで
腰に手を回させた。
「馬車までエスコートしてくださる?」
その放たれた一言を聞いただけで
妖しい魅力の虜になる。
ノインはフィンを手配した馬車までエスコートした。
去り際に
「いい子にしててね。」
とフィンはノインの頬にそっと触れる。
色香をまとっていた指先と
目元から悪戯な表情をしているのがわかる。
昼と夜の両方交じったフィンの姿だった。
走り去る馬車が遠く見えなくなっても
しばらく家の前にノインは立ち尽くしていた……