第10章 強奪する男
頭が酔ったように酷く、くらくらする。
朦朧とした意識の中、目を開ける。
白く輝き、温かい。
すぅっと目の前に誰かが舞い降りてくる。
鳥のように降りたった人はフィンに天使かと錯覚させる。
フィンの目が涙で滲む。
ファーランが目の前に立っている。
「・・・・逢えなくて・・・ごめんな。」
ファーランは悲しいそうに微笑んだ。
話したいのにフィンの声は出ない。
ただ頬を涙が伝っていく。
「‥…アイツ口は悪いけどいい奴だから。
‥…フィン。
自由の為に闘える?」
ファーランは困ったように眉を寄せながら笑顔を見せる。
フィンはファーランの言う”いい奴”の顔が思い浮かんだ。
フィンは必死に頭を動かして頷く。
「・・・少しでも地上(うえ)にいれて俺たちは幸せだった。」
ファーランは満ち足りた顔でフィンをやさしい瞳で包み込む。
赤髪のおさげ髪をした少女がファーランの後ろからひょこっと顔を覗かせる。
「みんなのこと、特に兄貴のことよろしく頼むぜ!!」
と緑色の瞳をとびっきり輝かせて笑いかける。
「・・・・私に任せて。」
やっとフィンの言葉が声として口から出た。
ファーランと赤髪の少女の姿が徐々に溶けていくように消えていく。
「待って・・・行かないで・・・
ありがとう。ファーランッ。」
消えていくファーランの口元が
フッとほほ笑んだように見えた。
次々と大粒の涙が頬を伝っていく。
フィンは立ち尽くし泣きじゃくる。
ファーランが逢いに来てくれた。
ずっと逢いたかった。
ありがとう。
やっと言えた。
「ファーランッ。」
フィンの口から漏れ出る。
温かく白い輝きに満ちていた世界はぬるい温度の灰色に色を変えてゆく。
私、”自由”の為に生きてみたくなったよ。
ファーラン。あなたの繋いだ世界を守りたい。
あの人たちのことも‥…私は絶対守る‥…。
灰色の世界は冷たい闇の世界に変貌した。