第2章 淹れたての紅茶
新聞の見出しには
≪一個旅団の戦力を持つ人類最強の男≫
なんて書きだされていた。
フィンの思い描いていた屈強な人物像とは裏腹に、リヴァイの小柄で、無機質で近寄りがたいイメージがちぐはぐだ。
そんな人物が今、自分の店に来て真剣に紅茶を選んでいる。
しかもかなりの紅茶通でつい親近感を覚えてしまう。
ふと、気になった。
嫌な予感がフィンの心をざわざわとさせる。
普段、この辺りでは憲兵団しかいない。
調査兵団なんて滅多にお目にかからない。
フィンはハンジに向かって
「調査兵団の人がこの辺りにいるのって珍しいですよね?」
と疑問を問いかけてみた。
あ、一般人が聞いたらまずいですよね。
とあとから付け加える。
ハンジが楽しそうに口を開いた。
「最近ここらで有名な面白い義賊を知ってるかい?」
と声を弾ませて話し始めた。
「貴族だけ狙う、堕天使の異名を持つ女怪盗だよ。
興味深いことにその怪盗は我々兵団しか扱えない立体起動装置を使うらしいんだ」
とハンジは得意げに話す。
「あぁ。最近新聞に載ってた怪盗ですね。」
と裏返りそうな声色を必死に隠しながら、
怪しまれないように返答する。
視線をハンジから
不自然に思われないように
気を付けながら窓にうつす。
フィンは背中にじんわりと汗をかく。
手をぐっと握った。