第2章 翻弄して翻弄されて
無邪気に笑って「よしっ!」と言った帝統さんに手を引かれ、街の端の方にある公園を抜けて、少し坂道を登った場所にある高台のような所に出る。
ベンチがいくつかあり、前が柵で仕切られていて、何組かのカップルがいる。
そこから街が見下ろせるようになっている。
「もっとこっち」
その場所より少し奥へ行くと、ほとんど人がいなくなる。
「こっちはあんまり人がいないですね」
「だいたいみんなさっきの場所にいるからな。こっちのが穴場だ」
静かで、普段ほとんど人が来ないから、よくこの辺りで野宿をするらしい。
柵の前に立ち、街を見下ろす。
「夜景とかならもっと見応えあんだろうけど、俺はこっちの風景のが好きだ」
夕陽が濃くなった街並みは、普段のキラキラしたものとは違って、何だか落ち着いた印象で、まるで違う街に見えた。
「凄く、素敵ですね……綺麗です」
妙にしんみりするような、でも落ち着く雰囲気に、黙って街を見つめる。
ただ、二人で街を見下ろしているこの時間も、私にとって貴重だ。
日が暮れ、夕陽に包まれていた街が、夜景に変わる。
夜景も綺麗だ。けれど、帝統さんが言うように、夕陽の下の街並みの方が私も好きだ。
「んじゃ、そろそろ帰るか」
もう、終わりか。あっという間で、何だか寂しく感じてしまう。
繋いだ手も、離れてしまって、胸がきゅっとなる。
歩き始めた帝統さんの背中を見つめていると、帝統さんが急に立ち止まる。
「あの……」
「やべぇな……思ったより早かったか……」
後ろから帝統さんを覗き込むと、呟いた帝統さんが気まずそうな顔をしている。
帝統さんが見る場所に目を向けると、先程のベンチが目に入る。
「っ!?」
さすがに経験のない私でも、その雰囲気には気づく。
先程いた何組かのカップルが、イチャイチャし始めている。
それも、なかなか、物凄く、濃厚な人もいて。
「すまねぇ……普段はもっと遅い時間なはずなんだが、こんなに早くにこうなるとは……」
帝統さんのせいじゃないのに、謝られる。
「あんなに、堂々と……」
「まぁ、だいたいこの辺は見られても平気っつーか、見られてる方がいいってカップルが集まる場所だしな」
なるほど。そういうものなのか。