第4章 ダイスでは決まらない勝敗
乱数さんが言ってくれた言葉が嬉しくて、私は帝統さんに「はい」と返事をした。
そのままベッドで髪を撫でられながら、ウトウトし始め、私の意識はゆっくりと睡魔に吸い取られて行った。
翌朝、目を覚ますと隣でスヤスヤ眠る帝統さんの顔があって、眠っているとその顔はまるで、やんちゃな子供みたいな表情で、やたらと幼く見えた。
可愛くて、ニヤけてダラしない顔の緩みを隠す事なく、帝統さんの顔を見つめながら、軽く鼻を突っついてみる。
少し唸ったけれど、また寝てしまった。
ずっと帝統さんを眺めてニヤついている私の耳に、機械の振動音が響く。
帝統さんのスマホだ。画面が上を向いていて、そこには“乱数”と書いてあった。
人のスマホに触るのはと思って、帝統さんを起こしたけれど、全然起きないうえ、乱数さんからの着信は鳴り続けていて、切れる様子がない。
悪いとは思ったけれど、仕方なくスマホを取り、通話ボタンを押す。
『もぉーっ! 帝統、出るのがおっそーいっ!!』
「あ、あの、帝統さんは、その……全然、起きてくれなくて……」
『その声は、おねーさん?』
驚きの声の後に、明らかに何かを含んだ声音に変わる。
『そっかそっかぁー。ついにおねーさんも帝統のものになっちゃったかぁー。悔しいけど、よかったね、おめでとうっ!』
楽しそうに、そして明るい声がして、私も表情が綻んでしまう。
『はっ!? ってことはー、帝統もついに大人になったんだねー』
「大人……ですか?」
『そーそー。チェリーちゃん卒業? 的な?』
心底楽しそうな声がしたのを最後に、私の耳からスマホが取り上げられた。
「誰がチェリーちゃんだ誰がっ! 勝手な事ばっか言ってんじゃねぇよっ! 乱数っ! に変な事吹き込むなっ!」
後ろから抱きすくめられ、身動きが取れずにじっとしていると、スマホを耳に当てながら、私の首筋に唇を這わせる。
ゾワリとして、身を捩る。
電話しているのにも関わらず、器用に私の体を弄り始める。
「ちょ、帝統さっ……ぁっ……ダメっ……」
「他の奴と楽しそうに話してた罰だ」
耳元で囁いて、耳に口付けて意地悪く笑う帝統さんに、ドキリとする。
惚れた弱みだ。この人には勝てないなと悟った瞬間だった。
〜完〜