第2章 翻弄して翻弄されて
それにしても、外でここまで周りを気にしないとは、私なら、恥ずかしくてどうにかなってしまう。
なのに、目はカップル達のエスカレートする行為を、ずっと写し続けていて。
「どうすっかな……さっさと、通り過ぎるか……」
頭を掻いて困り果てる帝統さんをよそに、私は初めて見る光景に、目が離せなくて。
「おい、あんま凝視すんな……」
「ひぁっ……」
こちらを向いた帝統さんが私の目を手で隠してしまった。
「うぅ、見えません……」
「見なくていいわ。ほら、行くぞ」
私の好奇心は、たまに変な方向に行くらしい。
手を引かれた私は、その手に力を込めた。
「ったくよぉ、見たくもねぇのに見せられるこっちの身にもなれって……ん? どした?」
スカートを握る手に力が入る。
なんたって私は今から、人生で初めての言葉を口にするのだから。
「私も……してみたいです……」
「は? するって……何をだ?」
意味が分からないと言ったような帝統さんが、多分物凄く赤く、情けない顔をしているであろう私を見下ろして、私が言わんとした事を察したようで、同じように赤くなる。
「ばっ……お前っ、急に何言ってんだっ……」
「少しだけ……ダメ、ですか?」
帝統さんにピタリと体を寄せて、誘う。
こんな大胆な事、した事も、考えた事すらなかった。
帝統さんは、口をパクパクさせて、そのうち、額に手を当ててため息を吐いた。
「はぁー……あのなぁ、初めて見て気分がひっぱられんのは分からなくもねぇけど、そういうのは好きな奴に言うもんだ……。自分を安売りすんな。もっと大事にしろ」
「私、帝統さん好きです」
「いや、だからそうじゃなくて……お前の言ってる好きってのとは違くてだな……」
私の言う好きと、帝統さんが思う好きは、違うのだろうか。
私の直感と、全身がこの人だと言ったあの日は、単なる錯覚だとでも言うのだろうか。
確かにあの日、私の心臓はこの人に反応したのに。
それすら、否定されてしまうのか。初めての、感情を。それを、本人に。
「っ!? は? おいっ、ちょ、待てっ、何で泣くんだよっ……泣くほどしたかったのかよ……」
「ちがっ……違うっ……」
感情が、ぐちゃぐちゃだ。