第2章 翻弄して翻弄されて
私の手を下げさせて、帝統さんはため息を吐いた。
「おいこら、指を差すんじゃありません。ったく、わーったよ。ほらっ……手、貸せよ……」
「わぁ、ふふっ、やったっ!」
「っ!? な、何がそんなに嬉しいんだか……」
出された帝統さんの手を握る。大きくて綺麗な手に触れ、ニヤける頬にもう片方の手で触れた。
「に、握り方は……こう、な」
繋いだ手の握り方を変え、指が絡まる。
昨日読んだ本に書いてあった。これは、俗に言う“恋人繋ぎ”というやつだ。
顔が更にニヤけて、心臓がうるさいくらいに高鳴る。
世の恋人達はこんなウキウキする事を体験しているとは、何て羨ましいのだろうか。
私と帝統さんは、他の人から見たら恋人に見えているのだろうか。
そうなら、いいな。
ほとんど街に来ることがなかったから、見るもの全部が新鮮で、ずっとキョロキョロしてしまう。
「あんま余所見ばっかしてっと、転ぶぞ」
「だって、色々ありすぎて、何か……凄い、キラキラですっ!」
「キラキラって……何か、乱数みたいだな……」
らむだ、とは、何だろう。
私が不思議そうな顔をしていたのに気づいたのか、帝統さんがスマホを操作する。
向けられた画面には、ピンクの頭の可愛らしい男の子が写っている。
「可愛らしいお友達ですね。この方が乱数さんですか?」
「あぁ、これでも成人してんだぜ」
かなり驚いた。この見た目で成人しているとは。しかも年上とか。まだ十代だとばかり思っていた。
「それにしても、見た目も服装もこんなに可愛い方が、この世に存在するんですね」
「俺には可愛さとかよく分からねぇけど、まぁ、でも確かにあいつはやたらモテるからなぁ」
ここまでの可愛さがあれば、モテるのも分かる。
「でも、私は帝統さんの方が素敵だと思いますよ?」
「はっ!? ばっ、なっ、おっ、おまっ、突然何言ってんだっ!?」
仄かに頬を赤くして、あたふたしている帝統さん。
これはこれでまた可愛い。
街の中もキラキラだけど、帝統さんも同じように私にとってキラキラだ。
どんどん彼に興味が出てくる。
「と、とにかくっ、さっさと行くぞっ!」
手を引かれ、足早に歩き始める。
早歩きなのに、私にも無理ない速さでエスコートされる。