第1章 自然体のあなた
こんな事に自信を持たないで欲しい。
「私で、いいんでしょうか……」
「おう、信用してるぜ」
また無邪気にニカリと笑った帝統さんに言われ、少し嬉しくなった。
まだ会って間もない私を、信用してくれるこの人の気持ちが素直に嬉しい。
カードキーで部屋を開ける。
「こちらが部屋になります。いつでも使って頂いて構いませんので、どうぞごゆっくりして下さいね」
部屋に入って、カードキーを突き刺すと部屋に明かりが付いた。
「おぉーっ! 広っ! こんな豪華な部屋、いいのかよっ!」
ベッドに仰向けに飛び込んで、大の字に寝転んではしゃいでいる。
「私がよく使う部屋でもあるので、大丈夫ですよ。遠慮なく使っちゃって下さい。それに、デートしてくれるんですよね?」
笑ってそう言うと、照れたように目を開き、上半身を勢いよく起こした。
「ばっ……そ、その言い方っ、やめろよなっ! デート、とかっ……俺のキャラじゃねぇっつーか……」
「そうですか? 帝統さんはデートしないんですか?」
「しねぇよっ! 俺は、ギャンブルさえ出来りゃ、それでいいんだよっ!」
目を逸らして、帝統さんが頭を掻きながら言った。
「帝統さん素敵だから、モテそうなのに」
「素敵っ!? モテっ……。あんた……変な女だな」
心外な事を言われている。人を褒めて貶されたのは、生まれて初めてだ。
ただ思った事を言っただけなのに、何か変な事言ったのか。
「失礼なっ! 変じゃないですよ。事実を言ったまでですっ!」
「わ、分かった分かったっ! そう怒んなよ……んな膨れっ面してたら、美人が台無しだぜ」
自然に貴重な言葉を言われた気がする。
帝統さんの口から、私を褒める言葉が出た。
「そんな事、初めて、言われました……」
「んあ? そんな事って、どれだ?」
「美人とか……初めて言われました」
自分の顔のレベルなんて、気にした事がないし、男性にこんな言葉を言ってもらったのも初めてだ。
相手が帝統さんだからだろうか、物凄く、嬉しい。
そう思ったら、妙に恥ずかしくなって来た。
「な、何で突然んな真っ赤になんだよっ! つ、釣られるだろうがっ!」
「そんな事言われても……嬉しいと思ったら、何か、恥ずかしくて……」
顔が熱い。