第4章 ダイスでは決まらない勝敗
引っ張られて体勢を崩した私は、またベッドへと引き戻される。
仰向けに倒れた私に、帝統さんは覆い被さって私の両手首をそれぞれベッドへ押し付けて固定した。
「勝負はお前の勝ち。俺は惨敗だ」
「……え?」
「お前に会わない間、何をしててもずっとお前の事ばっか考えてて、街でお前に似た女探しちまうし。お前が傍にいないと落ち着かねぇし、この俺がギャンブルしてる時ですら、全然集中出来ねぇんだよ……おかげでまたスッカラカンだ」
照れたような、困ったような顔で、私を喜ばせる事ばかり言ってのける帝統さん。
視界がどんどん滲んで歪んでいく。涙が端から零れ落ちる。
「よく泣く奴だな、ったくよぉ……」
帝統さんが苦笑しながら、私の目元に口づける。
「、好きだ。もう離れるとか許さねぇ。逃がさねぇから」
言って、帝統さんの顔が近づいてくる事に、目をキツく閉じる。
額に優しいキスが落ちた。
「バーカ、これ以上は何もしねぇよ」
無邪気に笑う帝統さんの、ベッドへついている腕に手を伸ばして触れる。
「何も、しないんですか?」
「お、お前またそういう事を……」
「だって、せっかく帝統さんに触れられる、特別な関係になったのに、何もないのは悲しいです……」
帝統さんを見つめていると、帝統さんが目をキョロキョロさせながら、何やら考えている。
「帝統さん、私知ってます。こういうの〘据え膳食わぬは男の恥〙って言うんですよねっ!」
「お前……下らねぇ事ばっか覚えてんじゃねぇよ」
「あたっ! デコピンとか酷いっ!」
おでこを撫でながら、帝統さんを恨めしい目で見る。
「お前さ、そういう事した事あんのか?」
質問の意味を一瞬考えて、首を振る。
男性と付き合う事すらなかったから、あるわけがない。
「別にそんなに急いでするような事でもないしな。ゆっくりしてきゃ……って、何やってんだよ……」
帝統さんの下にいながら、私は自らブラウスのボタンを外していく。
その手を帝統さんが止めるように包んだ。
「はぁ……そんなにシたいのかよ」
「シたいです。帝統さんに、触れたいし、触って欲しいです」
握られた帝統さんの手を、今度は私が握り返して、指にキスをする。
「それとも……私に魅力、ないですか?」