第3章 幕は切って落とされた
乱数さんに誘われ、乱数さんの仕事場兼住居へお招き頂いてしまった。
「そういえば、おねーさん今日雰囲気違うね? 髪型のせいかな?」
「お美しいあなたに、よくお似合いですよ。ねぇ、帝統?」
突然話を振られ、帝統さんは焦りを見せながら「あ、あぁ、そうだな」と言った。
言わされたという方がしっくりくる。
ありがとうと一応お礼を言ったけれど、帝統さんと目が合わない事の方が気になった。
帝統さんと会話がないまま、乱数さんのお家に着いた。
何と言うか、物凄くポップで、可愛らしいお家で、乱数さんらしさがたくさん詰まった場所だった。
「わぁ、可愛いものが溢れてて、凄く素敵なお部屋ですねっ!」
「でしょー? 僕がデザインしたんだよー」
「す、凄いですっ! 可愛すぎるっ!」
デザイナーをしている乱数さんが手掛けているらしい部屋には、色とりどりの物があって、ワクワクが止まらない。
「乱数の部屋でこんなに楽しそうに目を輝かせているとは、やはり女の子ですね」
お茶を入れてくれるらしい乱数さんがいなくなり、気になったのは、帝統さんがさっきから話を一切しない事だ。
それ以外にも、幻太郎さんが凄く見てくるのも気になる。
幻太郎さんと目が合って、お互いニコリとする。
幻太郎さんは不思議な人だ。そして、よく人を見ていると思う。
紅茶を入れてくれた乱数さんにお礼を言うと、乱数さんが私の隣に座る。
「おねーさん、可愛いモノ好きー?」
「はい、大好きですっ!」
「じゃぁーあ、僕は?」
質問の意味が分からず、首を傾げると、乱数さんが距離を詰めてくる。
顔が、近い。
「僕の事、好き?」
「そうですね、可愛いし、楽しい方だと思います」
「僕は、好きかって聞いてるのっ!」
視界いっぱいに迫力あるピンク色が迫って、気迫に押されて「好きですよ」と言った。
間違いではない。嫌いじゃないし、印象はいいから。
その後の乱数さんの意味深な笑いに、ただの勘だけど、嫌な予感がした。
「じゃぁー、おねーさん僕のモノにならない?」
突拍子もない言葉に、絶句してしまう。
「別に帝統の彼女ってわけじゃないんだよね? さっきのイケメンさんも、彼氏じゃないでしょ?」