第3章 幕は切って落とされた
もう帝統さんに逃げ場はなく、私を横目で見る。
その顔は少し赤くて、気まずそうな、なんとも言えない顔だ。
「お前……これは、反則だろっ……」
「だって、勝負ですから。私は自分を限界まで使いますよ」
そんな事で、この人が手に入るなら、何でもしよう。
とはいえ、経験がないので、ここからどうしたらいいのか、分からず少し考えるのに時間がかかる。
目の前には、また顔を逸らした帝統さんの首筋が。
閃いた私は、そのまま帝統さんの首筋にキスをする。
「こらっ、やめろってっ……」
肩を持たれるけれど、ここで引く訳にはいかない。
そのまま舌を這わせる。
「っ、っとに、お前はっ……」
「ぅわっ!」
抱きすくめられ、そのままベッドへ寝かされる。
下半身には帝統さんの足が巻きついて、上半身は抱きしめられているので、身動きが取れない。
「ったく、この姫さんは何考えてんだか」
「帝統さんの事、ですかね」
帝統さんは分かっているのだろうか、今のこの状況も、私にとっては嬉しいハプニングなのだという事に。
「はいはい、そうですか」
「あー、今流したっ! 酷いっ!」
そう言って私は帝統さんの体に密着するように、強く抱きついた。
「げっ……そういや、この体勢も……」
「はい。私にはご褒美ですね」
離されないように、力を込めてギュッと抱きつく。
「あんま強くすんな。苦しいっつーの」
「嫌です。離されたら困りますから」
「離さねぇから、ちょっと力抜け」
頭に顎を置かれ、力を抜いた。
添い寝みたいな体勢で、二人して無言になる。
静かなお互いの息遣いと、時計の音がやけに大きく聞こえる。
「そういや、お前さ、門限とかねぇのか?」
「大学の時まではありましたよ」
「何時だよ」
「18時です」
「はっ!? 早くねぇかっ!?」
「そうですか? 平均がどうなのか分からないですけど、サークルとかにも所属してませんし、特に困る事はなかったですよ」
無言になった帝統さんを見上げると、不思議な顔をしていた。
「ほんとに箱入りなんだな」
やっぱり普通の人からしたら、そう感じるんだろうな。普通とは違うと改めて知らされたみたいで、少し寂しくなる。
帝統さんの胸に顔を押し付ける。