第2章 翻弄して翻弄されて
帝統さんが言い淀む。
「好きです。ちゃんと、好きです。初めて帝統さんを見つけて、興味を持って、お話して、今日一日一緒にいて、私の体が、頭が、全部があなただって、言ってるんです」
食いつくような勢いで私が言うと、帝統さんは両手を頭の横に上げて、お手上げのポーズを取る。
「分かった、分かりました。悪かった、降参ですよ」
帝統さんは大きく息を吐き、こちらを見た。
「正直、俺はお前の事嫌いじゃねぇし、むしろ気に入ってはいる。けど、そういう意味で好きかって言われると、分かんねぇ」
真剣に私の気持ちに向き合おうとしている彼を、私は益々好きになる。
私はやっぱりこの人が欲しい。この人と一緒にいたい。この人と、楽しい事、たくさんしたい。
「だから、今の俺にはお前のしたい事を叶えてはやれねぇ」
「じゃ、好きにさせればいいという事ですよね? 好きになれば、問題はないですよね?」
「……は? あ、まぁ……ん?」
混乱している帝統さんの手を取り、私は口を開く。
「帝統さんの好きなギャンブルです。私はあなたという魅力的な景品をかけて、正々堂々、あなたの心に勝負を挑みます」
「俺は商品かよ」
「ええ、喉から手が出る程。何だかワクワクします」
策なんてないけれど、私はどうしても帝統さんが、帝統さんの気持ちが欲しい。
「へぇー、やる気満々じゃねぇかよ」
「こんなに何かを欲しがったのは、生まれて初めてですからっ! 何だか、考えただけで楽しいですっ!」
心が踊るとはこの事なのか。なんとも言えない高揚感に、顔がニヤニヤしてしまう。
「勝負、して下さいますか?」
私が言うと、帝統さんは犬歯を見せながら、ニヤリと意味ありげに笑った。
「勝負なんて言われちゃ、やらねぇわけにはいかねぇな。勝負ってんなら、手加減はしねぇぞ?」
「望むところですっ! 人生初の恋の底力、見せつけますっ!」
二人で握手をして、笑った。
そして早速、私は帝統さんに近寄る。
「おい……笑顔が黒いぞ」
「そんな事ありません。気のせいです」
ベッドで後退る帝統さんを、四つん這いで這いながら、ゆっくり追い詰める。
「つか、あんまその体勢はよくねぇ……」
顔を逸らし、私を見ようとしない帝統さんの足の間に体を素早く滑り込ませた。