第5章 大変だ、飯がない!
「まぁ、そんなことが。お優しいのですね、葉月さんは」
「ちと優し過ぎるがなァ…」
そして更に続きだが。
『ばい菌が入ったら大変です!』と急いで葉月の家に帰り、送って行くだけのつもりが半ば強制的に家に上がらされる。
座布団の上に座らされ、葉月は持って来た救急箱を俺の前にドンッと置くと、
『実弥さん、脱いでください!』
『ハァァ⁈』
とんでもねェ台詞を吐きやがった。
驚きで呆けている俺になどお構いなしで、俺の服を脱がしにかかる葉月。
好きな女に服を脱がされるという男としては中々に嬉しい状況…のはずなのに。
なんだこりゃァ。
葉月の顔が真剣過ぎるからか。
色気の欠片もありゃしねェ。
上の服を脱がし終えると、消毒液を布に含ませそれを俺の胸の傷にちょんちょんと押し当てて塗っていった。
医療行為…。
当たり前だが甘い雰囲気になんかなるはずもなく…。
更に言ってしまえば、怪我をしたのは一日前だ。
既にかさぶたも出来始めている。
今更なのだが、これで葉月の気がおさまるのならと、好きにさせてやることにした。
だが葉月にこうして手当てをされるのも悪くねェなと思う。
愛しい女が自分の身体を心配してくれるという喜びを、改めて実感したのだった。
「葉月さんは一般の方ですからね。私たちは怪我や血は見慣れていますけれど、葉月さんからしてみれば日常ではないですから、心配されて当然だと思います」
「まァ、そうだなァ」
毎回毎回怪我作る度に心配させて泣かれるのは、俺だって胸が痛い。