第6章 白詰草の花言葉
胡蝶は縁側の方から部屋の中央に置かれた座卓まで移動すると、こっちへ来いと俺らを手招きする。
「どうぞどうぞ。今お茶入れますので座って待ってて下さいね」
「ありがとサン。ほらこれ、頼まれてたやつだァ」
「まぁ、わざわざありがとうございます」
俺の両手合わせて八段と、葉月の二段、合わせて十段分の重箱に詰めた甘味を座卓へどんと置く。
「沢山ありますねぇ!運ぶの大変でしたでしょうに。……こんなに頼みましたっけ?」
「胡蝶、テメェ…」
あんなに紙びっしり書いといて何言ってやがる!
俺が青筋を立てると、慣れたもので「冗談ですよ〜」といつものように俺の怒りを笑顔でさらりと躱す。
「アオイとカナヲに、なほ、すみ、きよ達の分と、それから今ここで療養してる隊士達の分もお願いしたんです」
「はァ⁈…おいィ、蝶屋敷の奴らの分はともかく、そんな下っ端の奴らの分までなんて聞いてねェぞ!」
「えぇ、言ってませんので」
「ァア”⁈」
「いいじゃないですかぁ。ここにいる時くらい癒しがあっても。ねぇ?葉月さんもそう思いませんか?」
「あぁ…はい…?」
「葉月に答えにくい質問するんじゃねェ!」
と、俺達がこんなどうでもいい言い合いをしている間に、蝶屋敷の三人娘と胡蝶の継子の栗花落カナヲがやって来る。
初めにいた神崎アオイと一緒にぱぱっと俺達の茶の準備を終えると、三人分の甘味を残し、残りをその五人でしっかりと持って部屋を出て行った。
自分達の他に、隊士達にもきちんと分けるのだろう。
几帳面なこった。
「チッ、気に入らねェ。ちょっと任務に行ったくらいで怪我して帰って来るようなへなちょこなんざおやつ抜きでいいだろォ」
「手厳しいですねぇ不死川さんは」
「いや厳しかねェだろおやつだぞォ?」
何も飯抜きなんて言ってんじゃねェ。
おやつなら、子供のしつけ程度だろ…。
こんなくだらねェ言い合いを見せられている葉月。
何と言うかと思いきや、
「お二人とも仲が良いんですねぇ」
とんでもねェ勘違いだ。