第4章 初めまして、後藤です
不死川様が、笑った…。
初めて見る顔に、俺は驚きを隠せない。
いや、頭巾被ってるから見えちゃいないだろうが。
目を見開いて、口開けて、放心状態。
開いた口が塞がらないってやつだ。
これ外したら今の俺、ほんとに間抜けに見えんだろうなぁ。
頭巾被っててよかった、ほんと。
それにしても、不死川様ってこんな顔出来たんだなぁ。
この子がいるからだろうかと、隣にいる水篠さんにチラッと視線を移す。
すると、俺の目線の動きに気付いた不死川様。
「…こいつは俺の…連れだァ」
と、少し恥ずかしそうに言った。
聞いてないのに教えてくれた。
俺が気にしてると思ったのかもしれない。
なにこれ、今日の不死川様めっちゃ優しいんですけど。
“連れ“と言われた水篠さんも、恥ずかしそうにぽっと顔を赤らめて、それでも嬉しそうに不死川様に笑いかける。
それを見た不死川様も、水篠さんに優しい笑みを返した。
わぁー、すげぇ。
なんか、見ちゃいけないものを見ている気がする…。
目の前から放たれる甘い空気に、見ているだけで胸焼けしそうだ。
そして、これ以上見てたらいけない、そんな気もした。
「あの、俺はそろそろ失礼します」
「アァ、ごくろーさん」
「何か必要なものはございますか?あれば後ほどお持ちしますが」
「いや、今は無ェ。食料は昨日持って来てもらったとこだしなァ。何かありゃァまた頼む」
「承知致しました。では、俺はこれで失礼します」
「後藤さん、ご苦労様でした。またいらしてくださいね」
にこりと笑い見送ってくれる水篠さん。
癒されるー…。
頭を下げ、玄関を出ようとしたその時、
「ありがとなァ、気ィ付けて帰れよォ」
優しい言葉をかけてくれた。