第4章 初めまして、後藤です
「おっ、お休みのところ申し訳ありません!」
「いや、それはいいがよォ。で、なんの用だァ?」
「はい!悲鳴嶼様からの文を預かって参りました!」
「悲鳴嶼さん?」
俺から文を受け取ると、不死川様はその場でガサっと広げ、そのまま読み始める。
始めは静かに読んでいた不死川様。
暫くすると、眉間に皺を寄せ顔を上げた。
「オイ」
「は、はい!」
「この文、…誰が代筆したか知ってるかァ?」
「代筆は…、俺です」
そう言った途端、ピキッと音が鳴りそうなほどの青筋を立て、ギロリと睨まれる。
なんか怒ってんだけど⁈
なんでー⁈
恐怖で膝はガクガク、頭巾の下は冷や汗びっしょり。
凄まじい怒りの圧に身体が押し潰されそうだ。
耐えらんねぇよこんなの!
鬼より怖ぇって!
なんの罪だ?
代筆したこと?
そんな、あんまりじゃねーか。
なんてちっぽけな罪なんだと自分を憐れむも、遂に俺は刻まれるのかと神か仏に祈りを捧げようとしたその時、
「実弥さん!そんな怖い顔したらだめですよ!後藤さんが怖がってます!」
まるで般若の不死川様を見て、水篠さんが慌てて止めに入ってくれた。
救いの女神だ。
あー…、助かったー…。
「折角持って来てくださったんですから、そんなに怒っちゃだめですよ?」
やんわりと制す水篠さん。
水篠さんの声が耳に届いたのか、浮き出た青筋が嘘のようにスッと引いていく。
あの不死川様の怒りを一発で鎮めたよ。
すげぇなこの子。
命の危機も回避でき、頭巾の下の俺の滝のような冷や汗もピタリと止まった。
「あー…、そうだなァ。悪かった」
素直に謝ってくれた。
信じられないものを見た気分だ。
「あれだァ、文の内容なんだがよォ…。できれば他言無用で頼みたい。なんなら忘れてくれると助かるんだが…」
文の内容を知られたくなかったってことか?
それならそうと普通に言って欲しい…。
まぁ柱相手にそんなこと、口が裂けても言えねぇけどさ。
「かしこまりました!全力で忘れさせていただきます!」
「あぁ頼む、悪ィなァ」
そう言うと、不死川様は僅かに表情を和らげた。