第1章 幸せのカタチ
「あの葉月さんて子、とってもいい子ね!」
確かにいい子だ。
そしてよく気が利くようで、見てるとよく動いている。くるくると。
俺達にお茶を運ぶと、
「葉月ちゃん注文お願ーい!」
「はーい!」
注文を受け厨房へ向かい今度は甘露寺の桜餅を運び、
「葉月ちゃんお水ちょうだーい!」
「はいただいまー!」
直ぐ様他の客に呼ばれて水を持って行くと、
「葉月ちゃーん!」
「はーい!」
また呼ばれ、用が済むと
「葉月ちゃーん!」
「はーい!」
「葉月ちゃーん」
「はーい」
「………」
……ちょっと働き過ぎじゃねェか?
他の女給だっているってのに、馴染み客なのか水篠ばかり呼んでやがる。
流石に疲れるだろ……
このまま仕事終わりに家に着くまでにどこかでぶっ倒れでもしねェか心配だ。
居ても立ってもいられず、俺は水篠を呼び止める。
「はい!ご注文ですか?」
「ちげェ、お前いつ仕事終わんだァ?」
「もうちょっとで終わりますよ?」
それがどうした?というような顔をしている。
そりゃそうか。
そんな顔の水篠に俺はこう言った。
「終わるまで待ってる」
「え?」
今度は、はて?と首を傾げた。
更に俺はこう続けた。
「家まで送ってやる」
「……えええ⁈」
水篠は大きな目を更に大きくして驚いていた。
おもしれェなァ。
「ごちそーさん。先に外で待ってっからなァ」
水篠の頭をポンと撫でると、今度は顔が赤くなった。
コロコロと変わる表情が可愛くてつい構いたくなってしまうが、取り敢えず女将さんに礼を言って一旦先に外へ出て待つ事にした。
「不死川、俺達はこれで失礼する」
「不死川さんまたね。もし任務でご一緒したらその時はよろしくね」
「オォ、気ィ付けてなァ」
伊黒と甘露寺は先に帰って行った。
暫くすると、帰り支度をした水篠が店から出てきた。