第3章 おそろい*
「お前初めてだろォ?…こういうことすんの」
「はい…。実弥さんは?」
「…ホントに聞きてェのかァ?」
「…やっぱり遠慮しときます」
聞いておいてなんだけど…
そこはやっぱり聞きたくないです。
「初めてなら怖くて当たり前だァ。俺も少し急ぎ過ぎた。悪かったなァ」
許してくれと言うかのように、さらにキツく抱きしめられる。
気にしなくていいですと言いたくて、私も実弥さんの背中に腕を回してぎゅっとしがみついた。
「今日は、ごめんなさい…。次は私、がんばれると思うので…」
「こういうのは頑張ってするもんじゃねェ。葉月、お前がいいって思える時が来るまで待っててやる。だから無理だけはすんなよォ」
「はい…」
少し腕を緩め、私の頭を撫でながら愛おしそうに微笑む実弥さん。
見つめる瞳は先程とは打って変わり、とても穏やかで優しかった。
「まァそん時が来たら…、覚悟しとけよォ?」
「…かしこまりました」
ニヤリと笑う実弥さん。
その時までに、どんな覚悟が必要なのか…
一体何をされるのか、あれやこれやと考えてしまうのだった。
「よし、寝る」
寝る宣言をした実弥さん。
覆い被さっていた身体を横へとずらし、そして当たり前のように私を抱きしめる。
実弥さんと一緒に寝るということは、もれなく抱擁が付いてくるんだなと覚えておくことにした。
先程一悶着(?)あったからか、妙に気持ちが落ち着いている。
あれほど眠れないと思っていたのに、これならすぐにでも眠れそうだ。
「寝れそうかァ?」
「はい、すぐにでも」
「そーかい。よかったなァ」
「実弥さんは眠れそうですか?」
「アァ、じき寝れそうだァ」
「それはよかったです」
「…話してたら寝れねェなァ」
「ふふ、そうですね。でも楽しいです」
「そーかよ」と言って、実弥さんはフッと笑った。
実弥さんの温もりと香りに包まれて、私の胸はいっぱいになる。
私、幸せだなぁ。