第3章 おそろい*
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戸惑ううちに、口付けは少しずつ下へとおりていく。
首筋をかぷっと甘噛みされると、
「っ…ひゃあっ…!」
おかしな声が飛び出した。
くすぐったいような、ぞわぞわとした、初めての感覚。
なぁに、これ…?
今日の私、おかしい…
何が起こっているのか分からなくなった私は思わずぎゅっと目を瞑り、次に訪れるであろう実弥さんから与えられる未知なる感覚に、身を委ねることにした。
けれども…
いつまで経っても“次“はやって来なかった。
あれ?と思い、そっと目を開けてみると…
「ちゃんと殴れっつったろォ」
目の前に、困ったように微笑む実弥さんがいた。
「っでも…、いやではない、です…よ?」
「…震えてんだろォ」
「え…」
そう言われ、自分の身体を触ってみれば、そこには確かに小刻みに震える自分がいた。
「うそ、なんで…」
自分で気付かないなんて…
戸惑う私を見た実弥さんは、包み込むようにぎゅうっと私を抱きしめた。
「ごめんなァ、怖かったろォ」
「こわくなんて…。だって…さねみ、さん…だもの…」
言ったその瞬間、私は静かに涙を流した。
この時初めて気がついた。
本当は私…怖かったんだ。
私の涙に気が付いた実弥さんは、それを優しく指で拭ってくれる。
「ごめ、なさい…」
「なんでお前が謝る」
「だって、何も出来なくて…。がっかりでしょ…?」
怖がって身を固くしてるだけの女なんて、きっとつまらない。
呆れられたかもしれないと思っていると、
「…ばかやろォがァ」
そう吐き捨てながら、私をぎゅうっときつく抱きしめた。
怒られてしまった。
でもちっともこわくない。
実弥さんのばかやろォが、あったかいばかやろォだったから。