第3章 おそろい*
*
実弥さんの優しい声色に、ひどく安心した。
それと同時に何故だか胸がきゅっと切なくなって、実弥さんにぎゅっとしがみつく。
「葉月」
ふいに名前を呼ばれて実弥さんの胸から顔を上げると、
「っ…ん…」
優しい口付けが降ってきた。
唇の感触を楽しむかのように、甘くはむ実弥さんの口付け。
合わせた唇が心地いいなんてはしたないと思うのに、心安らぐのはなぜだろう。
ゆっくりと続けられるそれに酔いしれていると、いつしかそれは深いものへと変わって行った。
「はぁ…んっ」
「葉月…」
合間に囁かれる実弥さんの声色に、身体の奥底で燻っていた熱が湧き上がってくる。
なんだろう、いつもより…熱い…
熱くなる身体に加え、乱れていく吐息。
どうしよう、くらくらする…
おかしくなった自分に戸惑いながらも、実弥さんから与えられる口付けを受け入れた。
すると唇はそのままに、背中に回されていた実弥さんの手のひらが、ゆっくりと下へとおりていく。
這わされる感覚に、私はある予感を抱き…
「実弥…さんっ…」
案の定、その手は私の帯に到達した。
不意に訪れた未知なる世界の入り口に、私は思わずきゅっと身体を強張らせる。
「葉月…。今から俺がしようとしてること…、分かるか?」
私の上に覆い被さる実弥さんが、そっと私に問いかける。
瞳は熱を孕み、余裕のないように見えるも、頬を撫でる手つきは優しく私を包み込む。
男女が同じ褥で夜を明かす。
経験のない私でも、実弥さんの言わんとすることは理解できる。
私は小さくこくりと頷いた。
「嫌だったら、ちゃんと殴れよォ」
そう言うと、実弥さんは私の額に唇を押し付ける。
それから目尻、頬、顎と順番に口付けていった。
いやではない。
いやではないの。
でも、どうしたらいいの?
こんな経験初めてで、自分が何をしたらいいのか皆目見当もつかない。